紅茸べにたけ)” の例文
たま退引のつぴきならぬ義理で、日本座敷の宴会に招かれると、博士は二三杯の酒で紅茸べにたけのやうにあかくなつた顔をにこにこさせながら
紅茸べにたけと言うだあね、薄紅うすあこうて、白うて、うつくしい綺麗な婦人おんなよ。あれ、知らっしゃんねえがな、この位な事をや。」
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この紅茸べにたけのうつくしさ。
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
え、お前様、そいつあ、うっかりしようもんならられますぜ。紅茸べにたけといってね、見ると綺麗きれいでさ。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……なかに、紅絹もみきれに、しろかほばかりして褄折笠つまをりがさ姿すがたがある。紅茸べにたけらしい。あのつゆびたいろは、かすかひかりをさへはなつて、たとへば、妖女えうぢよえんがある。にはゑたいくらゐにおもふ。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小さな紅茸べにたけを、私が見つけて、それさえ嬉しくって取ろうとするのを、遮って留めながら、浪路が松の根に気もえた、袖褄そでつまをついて坐った時、あせった頬は汗ばんで、その頸脚えりあしのみ
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
松茸まつたけ初茸はつたけ木茸きたけ岩茸いはたけ占地しめぢいろ/\、千本占地せんぼんしめぢ小倉占地をぐらしめぢ一本占地いつぽんしめぢ榎茸えのきだけ針茸はりだけ舞茸まひだけどくありとても紅茸べにたけべにに、黄茸きだけに、しろむらさきに、坊主茸ばうずだけ饅頭茸まんぢうだけ烏茸からすだけ鳶茸とんびだけ灰茸はひだけなど
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
三枚ばかり附木つけぎの表へ、(ひとくみ)も仮名で書き、(二せん)も仮名で記して、前に並べて、きざ柿の熟したのが、こつこつと揃ったような、昔はたにしが尼になる、これは紅茸べにたけさとりを開いて
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
色がいいから紅茸べにたけなどと、二房一組——色糸の手鞠てまりさえ随分糸の乱れたのに、就中なかんずく蒼然そうぜんと古色を帯びて、しかも精巧目を驚かすのがあって、——中に、可愛い娘のてのひらほどの甜瓜まくわが、一顆ひとつ
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お客さん——これは人間ではありません。——紅茸べにたけです。」
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)