ぞく)” の例文
伯夷と叔斉の兄弟ふたりは、たがいに位を譲って国をのがれ、後、周の武王を諫めて用いられないと、首陽山にかくれて、生涯周のぞくを喰わなかった。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを無理に御目出たがろうとすると、所謂いわゆる太倉たいそうぞく陳々相依ちんちんあいよるというすこぶ目出度めでたくない現象に腐化して仕舞しまう。
元日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかるに伯夷はくい叔齊しゆくせいこれぢ、しう(三四)ぞくくらはず、首陽山しゆやうざんかくれ、つてこれくらふ。ゑてまさせんとするにおよんでうたつくる。いは
この国家の大事に際しては、びょうたる滄海そうかいの一ぞく自家われ川島武男が一身の死活浮沈、なんぞ問うに足らんや。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
孤竹国君こちくこくくんの二子で、周の武王がいん紂王ちゅうおうを伐とうとした時に、これを諌めて用いられず、周のぞくを食むのを潔しとせずして首陽山にかくれ、蕨を採つて食つていたが
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
はだえぞくしながらその場を足早に下り去ったというのは、理由なきことではありませんでした。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「人を馬鹿呼ばわりするからには、自分を悧巧と思っているに相違ない。そのお悧巧な君にして大馬鹿が社長を勤めている会社のぞくむとはこれ如何に? と訊きたくなるよ」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
高麗国こまのくにの滅亡するや、その遺民唐のぞくむことを潔しとせず、相率いて我が国に帰化し、その数数千に及び、武蔵その他の東国に住んだが、それらの者のおさ剽盗ぞくに家財を奪われるを恐れ
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「僕は、成金輩のぞくむをいさぎよしとしないのです。ハヽヽヽ。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
道に当りて高いもの——という伏字ふせじだ。蜀のぞくを喰いながら、こんなことを平気で説いていたのである。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぞく六万を贈るほどの好意を示したのも、単に君主としての体面を飾るためであって、政治の上に少しでも彼の意見を反映させようとする、真面目な考えからではない、と見て取ったからである。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「僕は、成金ばらぞくむをいさぎよしとしないのです。ハヽヽヽ。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これを賞めるにやぶさかでないが、依然、武力を行使し、侵略を事とし、魏を攻めんなどとする志を持つに至っては、まさに、救うべからざる好乱こうらんの賊子、蜀のぞくくらって蜀を亡ぼす者でなくてなんぞ。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)