ひとし)” の例文
立花左仲さちうは此騷動さうだうを聞とひとし安間あんまたくしのび入二百兩うばひ取りて逐電ちくでんせしかば嘉川かがは宅番たくばんの者より此段大岡殿へ屆け出しなり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
本当の人間を描く点と、その作風の地味な点とで、長谷川伸氏の大衆物は、正宗白鳥氏の創作と、その趣をひとしくしている。
大衆物寸観 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「英雄色を好むさ。」と傲然ごうぜんとして言った。二人が気の合うのはすなわちここで、藁草履と猟犬と用いる手段は異なるけれども、その目的はひとしいのである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さりながら、何程思続け候とても、水をもとめていよいほのほかれ候にひとし苦艱くげんの募り候のみにて、いつ此責このせめのがるるともなくながらさふらふは、孱弱かよわき女の身にはあまりに余に難忍しのびがたき事に御座候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
くるをまつて人夫はなべこめとをたづさへ、渓流けいりゆうくだり飯を炊煑してのぼきたる、一行はじめてはらたし、勢にじやうじて山をくだり、三長沢支流をさかのぼる、此河は利根の本源とほとんど長をひとしくし
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
借請かりうけ正直しやうぢき成者なるものを追立候儀勘太郎同類にひとしおもくも仰付られべく處格別の御慈悲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼の思は前夜の悪夢を反復くりかへすにひとしき苦悩を辞する能はざればなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
(手にしながら姿見に見入る。侍女等、ひとし其方そなたを凝視す。)
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
引者ながら彼方は路傍ろばうの柳にひとし浮氣うはきの風の吹くまに/\なびく女に非れば打腹立うちはらだち言懲いひこらさんとは思へども家主なればとこらへて程よくまぎらはし其まゝにして過すに庄兵衞情慾じやうよくいよ/\つのりお光は我を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)