竹籠たけかご)” の例文
そして色のさめた服や着物の尻をさすりながら、とり落した栗むきのヘラ棒や、下へころんで行つた竹籠たけかごを素早くひろひ上げました。
栗ひろひ週間 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
竹簾たけすだれ、竹皮細工、色染竹文庫、くしおうぎ団扇うちわ竹籠たけかごなどの数々。中でも簾は上等の品になると絹を見るようで、技は昔と変りがない。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
女4 それに、今度の御相手は、なんでも、竹籠たけかご作りのお爺さんとかの娘で、それもまだ十七、八のとんだいやしい田舎娘いなかむすめなんですって!
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
かつての月卿雲客げっけいうんかくも、人違いするばかりなやつれ方やらごろものまま、怪しげな竹籠たけかご伝馬てんま板輿いたごしなどで、七条を東へ、河原のぼりに入洛じゅらくして来た。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道路の入り口にはすでに盛り砂が用意され、竹籠たけかごに厚紙を張った消防用の水桶みずおけは本陣の門前にえ置かれ、玄関のところには二張ふたはりの幕も張り回された。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
竹籠たけかごに熱き光りを避けて、かすかにともすランプを隔てて、右手に違い棚、前は緑り深き庭に向えるが女である。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大ていはそっくり入れ物に入れてくることがまた一つであったが、そのしょかただけは改良した連雀も同じで、竹籠たけかごの左右に幅のひろい裂織さきおりひもをむすびつけ
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
人通りが少しまばらになると、女はバタバタと店を仕舞って、くだん贓品ぞうひんやらガラクタやらを竹籠たけかごの中にほうり込み、大風呂敷に包んで背負った上、茣蓙を丸めて小脇に
そして町役場などがあり、その裏には貧しい漁夫や、貝を採るための長いの付いた竹籠たけかごを作る者や、その日によって雇われ先の変る、つまり舟をぐことも知らず
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
家族を率いて次から次へと雨露を凌ぐに足る様な適当な岩窟いわやや、塚穴つかあななどを見付けて臨時の住家すみかとし、ざる竹籠たけかごなどを造っては、その付近二三里の場所を売って歩く。
ある暗い旧家では私の友人の父は、息子むすこからもらったという竹籠たけかごを、彼の鼻のあぶらを朝夕に塗り込んで十年間みがきつづけてうるしの光沢を作ったといって、戸棚から大切そうに取り出した。
ついこの先の竹林の奥に住んでいる竹籠たけかご作りのじいの娘におふみをつけようとなさっているのを、手前この目ではっきり見てしまいました。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
時代おくれのものと人は呼ぶかも知れぬが、手工の美を今もとどめているのはかかる店ばかりである。杓子しゃくしおけほうき竹籠たけかご
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ただ、ジッとしていられない恐怖の本能が、彼をして、竹籠たけかごをかむキリギリスの如きを演じさせる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貝を掘るための竹籠たけかごを作る「籠屋」のおたまが、るとき私に向って云った。おたまも小学三年生であり、「千本」のちょうとは違った立場で、私にいろいろな情報を提供してくれていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
袋や竹籠たけかごるいは前からあって、これも背なかに負うものが多かったが、それらはかくべつ重いものでなく、なにか荷物ができればその上に小附こづけしてくるのだったが、後には仕事によって
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
なよたけの家のすぐ傍にね、竹籠たけかご納屋なやがあるんだ。僕達はこれからそっとそこへ行って、気付かれないようにその納屋ん中へ隠れるんだ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
街道をつたって同じ仕事が目に繰り返って映れば、そのわざに歴史があることが判る。漆器しっき屋、竹籠たけかご屋、箪笥たんす屋等、多くは集団して軒を連ねる。京の夷川えびすがわ等いい例である。
地方の民芸 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
秋もやや末になって、里の人たちが朝起きて山の方を見ると、この岩屋から細々ほそぼそと煙が揚がっている。ああもうテンバがきているなどという中に、子を負うた女がささらや竹籠たけかごを売りにくる。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いくさ目付の眼をしのんで迄、争って、彼女の竹籠たけかごを軽くした。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)