端緒いとぐち)” の例文
是が縁に成って惠梅と水司又市の二人がおやま山之助の家へ来て永く足を留める。これが又一つ仇討あだうちに成りまする端緒いとぐちでございます。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二人は沁々しみじみとした心持で笑いました。が、事件はこれがほんの端緒いとぐちで、この後に続く恐ろしい発展は、全く笑いごとではなかったのです。
鉄胤かねたねはじめその子息むすこさんの延胤のぶたねとも交わりを結ぶ端緒いとぐちを得たというだけにも満足して、十一屋の二階でいろいろと荷物を片づけにかかった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
どうせそういう疑いの端緒いとぐちを見出された上は、これまで私と関係のあった事を発見されてあるいは奇禍きかを買われるような事があるかも知れない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
このくらい紙があれば仕事は永続するにちがいないとず信仰して、此方こっちでは払いをキリ/\してると云うようなけで、れが端緒いとぐちになって
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
人間の事業の最高記念物、新発見の智識の庫として、非常に貴ばれたもので、これを精読して、自分の発見の端緒いとぐちを得た人が、どの位あるかわからない。
なにはなし端緒いとぐちでももとめたいといふ容子ようすくりこずゑからだらりとたれてる南瓜たうなすしり見上みあげながらいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼は他人に対して別に何事もこうとはしなかったが、それでも捜索の端緒いとぐちになるような暗示があらば、どんなことでも聞き逃がすまいと、常に聴き耳を立てていた。
こうして、事件の表面に最初の一石を投じて、あの全米の恐怖を明るみへ持出して大騒動センセイション端緒いとぐちを作ったのは、この、バッファロの漫画家ケネス・オハラの失踪だったのである。
斧を持った夫人の像 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
平生いつもであったらその老人の冗談を無駄口むだぐち端緒いとぐちにしてしゃべりだすところであった。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
説けりおはなしは山村俊雄としおと申すふところ育ち団十菊五を島原に見た帰りみち飯だけの突合いととある二階へ連れ込まれたがそもそもの端緒いとぐち一向だね一ツ献じようとさされたる猪口ちょくをイエどうも私はと一言を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
と話の端緒いとぐちを切り始める。眠るともなく藤吉は眼をつぶっていた。
藻西太郎の捕縛一条は昨夜より此近辺の大問題とれる事なれば問ざるも先より語り出る程にして中に口重き者あらば実際に少しばかりの買物を為しを餌に話の端緒いとぐちを釣出すなど掛引万々抜目なし
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
勿論推定の端緒いとぐちを引き出すものではなかった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
人は出世をして歓楽のきわまる時は憂いの端緒いとぐちで、何か間違いのあった時には、それ/″\力になる者がなければならない
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その事がやはりこの尊者に聞えてあるいは思いにしずんで何か質問の端緒いとぐちを捜して居るのではないかと思ったです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
事件の端緒いとぐちを引出すことにかけては、親分の銭形平次に、毎々舌を巻かせるほどの名人だったのです。
それよりは皆なの意見をれて今しばらく伊東に滞在しておれ、とある。不思議だ、不思議だと、お種が思い続けたことは、ようや端緒いとぐちだけ呑込のみこめることが出来るように成った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
惣右衞門の忰惣吉が此の庵室を尋ねて参るという処から、新吉はもうこらえ兼ねて、草苅鎌を以て自殺致しますという、新吉改心の端緒いとぐちでございます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
すくなくも元園町の友人が酒の上で言った言葉から、その端緒いとぐちを見つけて来たというだけでも、彼に取って、難有ありがたい賜物のように思われた。どうかして自分を救わねば成らない。同時に節子をも。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)