すぐ)” の例文
「これからはまた新田の力で宮方も勢いを増すでおじゃろ。くすのき北畠きたばたけが絶えたは惜しいが、また二方が世にすぐれておじゃるから……」
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
むかし、姓名判断などは、なかったのであるが、幸村ほど智才すぐれしものは時に際し事に触れて、いろいろ名前を替えたのだろう。
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
一、筋のすぐれていること 筋というものは一般の小説では必ずしも重要ではない。筋のない小説も可能であるし、実際にもある。
現下文壇と探偵小説 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
つくばいの品格は最もすぐれたものでなければならず、形は大きくも小さくもない、程よい見馴染みなじみの快いものでなければならぬ。
庭をつくる人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
多くのすぐれた句を書いているのは、彼の気質が若々しく、枯淡や洒脱を本領とする一般俳人の中にあって、範疇はんちゅういっする青春性を持っていたのと
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
いゝ事をされた! これはすぐれた絵です! わたしには今自分のものにするほどの余裕がないので、売立の話を聞いてから毎日のやうに通つてながめてゐたが
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
それは人間の誰れよりも強い星の性格と、貪慾どんよくなる本能と、鋭き神経と、体力と而して最もすぐれたる表現力を兼ね備えているものでなければならないと思う。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
学生は特に一能一芸にすぐれてさえおれば、他の学科は聴講しただけで立派に進級させるつもりです。
文化学院の設立について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
初めに入つたキヤツフエ・ド・※ルは音楽がすぐれて居ると云ふ事だが僕等には其程それほどよくわからない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
イタリイはふる時代じだい文化ぶんかさかえたくにでありますから、これ博物館はくぶつかんをさめてあるものにはすぐれたしなおほく、とうてい國々くに/″\ではられないものがたくさんあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
校中の人望家でもあったし人物も立派で気象もすぐれて居て柔道も三段でありましたが、上海でとうとうやられてしまいました、しかもその男は同郷の資産家の一ツブ種です
で、目をあげて念入りに相手の顔を見たが、別にすぐれて高い鼻も持つてゐなかつた。
すぐれた画も出来ませんでしたが自分を欺いた画は描いて来たようには思いません。
「汐くみ」の画に就いて (新字新仮名) / 上村松園(著)
「鮒鮓」という言葉、その特殊なイメージが、夏の日の雲と対照して、不思議に寂しい旅愁を感じさせるところに、この句のすぐれた技巧を見るべきである。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
僕は芸術的にすぐれてゐればこそ、民衆の教養が進むに従つて、段々通俗化して行つたのだと思ふのです。紅葉の考へ方や、観方はいかにも常識的かも知れません。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
この日本製につぽんせいかゞみ和鏡わきようまをしてをります。つまりそれは日本につぽんがその時代じだいになつて、だん/″\文化ぶんかすゝんで技術ぎじゆつすぐれてつたことをしめす、なによりもよい證據しようこであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
好きになるということは恐ろしいことに違いない、どこにもこの男にすぐれたところなぞなく、怠け者で小汚こぎたないが、受け答えの返事の声が、ずば抜けて早く大声で元気だった。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
そこでは外的事件の進行が大切なのであって、それと関係のない細々しい描写は、それがどんなに文学的にすぐれていても、結局探偵小説として効果を減殺する役割しか演じない。
現下文壇と探偵小説 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
マルセエユから巴里パリイへ帰る途中にリオンへ寄つて其処そこの博物館を観た。シヤヷンヌのすぐれた壁画の外にロダンの彫像の逸品が三つばかり心に遺つて居る。シヤヷンヌはこの地に生れたのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
僕は芸術的にすぐれていればこそ、民衆の教養が進むに従って、段々通俗化して行ったのだと思うのです。紅葉の考え方や、観方はいかにも常識的かも知れません。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
二つとも佳作であって、容易に取捨を決しがたいが、結局「故人に逢ひぬ」の方がすぐれているだろう。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
君がすぐれし詩才をたヽふることよ。
失楽 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
が、他の有力な原因は、俺は山野や桑田などの間にあって、彼らのすぐれた天分から絶えず受けている不快な圧迫に、堪らなくなったためだと、いえばいわれないこともない。
無名作家の日記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
智慧ちえの優劣について言うならば、詩人はむしろ小説家にすぐれていても劣りはしない。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
貴女のそのすぐれた美しさと、貴女の教養や趣味に対して、心から敬慕しているものです。が、僕は貴女がそうした天分や教養を邪道に使っているのを見ると、本当に心が暗くなるのです。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
荘田夫人の美しい端麗たんれい容貌ようぼうや、その溌剌はつらつとして華やかな動作や、そのすぐれた教養や趣味に、兄も自分も、若い心を、引き寄せられて行った頃の思い出が、後から/\頭の中に浮んで来た。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)