石畳いしだたみ)” の例文
旧字:石疊
石畳いしだたみ穿下ほりおろした合目あわせめには、このあたりに産する何とかいうかに甲良こうらが黄色で、足の赤い、小さなのがかずかぎりなくむらがって動いて居る。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人ふたり小僧こぞうさんは、たるまえ石畳いしだたみうえで、たがいにしあい、もみいしていました。うん、うん、といううなりごえがきこえたのです。
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)
降り立った二人の前に、広い石畳いしだたみと、御影石みかげいしの門柱と、締め切ったかし模様の鉄扉と、打続くコンクリートべいがあった。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この橋は幅三間位もある相当広い橋で、下は石畳いしだたみを敷きつめた水路になっている。水路といっても雨の降らない日は水はほとんど流れていないのである。
動物園の一夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
滝は華厳けごんよりも規模は小さいが、思つたよりも好かつた。石畳いしだたみの道をのぼつて行くと僕は息切れがした。
遍路 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
本通りから左の或る横町の薄暗い静かな街へ入ると、ぢきにその屋号の出た電燈が見つかつたので、私は打水うちみづをした石畳いしだたみを踏んで、燈籠とうろうと反対の側にある玄関先きへかゝつた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
山西は石畳いしだたみになった仲店の前を下駄げた引摺ひきずるようにして、電車通りの方へ歩いていた。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「坂道はみんな石畳いしだたみになっています。初めて来た人は何よりもこれが目につくようです」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
小木の港からやや離れたところに宿根木しゅくねぎと呼ぶ小さな漁村があります。折があったら訪ねて下さい。世にも珍らしい家並の村で、二階建がそれは狭い石畳いしだたみの道を中にはさんで寄り添います。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
むちでたたかれながらはずみをつけて渡り切ろうとしても、中程に来ると、わだちが空まわりする。馬はずるずる後退しそうになる。石畳いしだたみの上に爪立つまだてたひづめのうらがきらりと光って、口のあわが白い。
馬地獄 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
谷中尉は、お茶を一杯飲んだだけで、では、とわらいながら立ち上った。ややって、玄関から門までの石畳いしだたみを踏んで出て行く谷中尉の靴の音がきこえて来た。しばらくして、おんなが部屋に来た。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
このいえのおじいさんがくちやかましいので、毎朝まいあさ女中じょちゅうさんは、つめたいのをがまんして、もんをふいたり、石畳いしだたみをゴシゴシとたわしで、みがくのでありました。
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)
滝は華厳けごんよりも規模は小さいが、思ったよりも好かった。石畳いしだたみの道をのぼって行くと僕は息切いきぎれがした。
遍路 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「また、あすこへきて、石畳いしだたみうえをよごしている。」と、くちこごとをいいながら、お勝手かってもとからてくると、おじいさんは、でこちらへきてはならぬとかえしました。
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)
石畳いしだたみになっていて、昼間ひるまは、建物たてものなかへはいったり、たりする人々ひとびと足音あしおとるのであったが、よるになると、おおきなとびらまって、しんとして、ちょうどねむった魔物まもののように、建物たてもの
街の幸福 (新字新仮名) / 小川未明(著)