知音ちいん)” の例文
山家やまがあたりにむものが、邸中やしきぢう座敷ざしきまでおほききのこいくつともなくたゝるのにこうじて、大峰おほみね葛城かつらぎわたつた知音ちいん山伏やまぶしたのんでると
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一〇一 旅人豊間根とよまね村を過ぎ、夜け疲れたれば、知音ちいんの者の家に灯火の見ゆるをさいわいに、入りて休息せんとせしに、よき時に来合きあわせたり、今夕死人あり
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
わが手は戸に触れて音なふ声と共に、中には早や珍客の来遊におどろける言葉を洩らせるものあり。わがおんむかしに変らぬか、なつかしきものは往日わうじつ知音ちいんなり。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
お角という奴が、胡麻をするかすらないか、そんなことはよけいなことだが、とにかく、藤原の伊太夫には相当知音ちいんの間柄と見える。その点を健斎が説明して言うには
待て夜食の支度したくして爰を立出泉州さかひに着し知音ちいんの方を尋ねけるに其知音と云は至つて貧敷まづしく日々人にやとはれかすかなるけふりも立兼ねるものなりしが先爰にかくれて逗留とうりうし能き傳手つて
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
知音ちいん諸氏によって、君を追悼した登山会が催されたとすれば、君にはいい手向たむけである。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
囹圄ひとやのタツソオが身をそこなひしは、獨り戀路の關を据ゑられしが爲めのみにあらず。その詩の爲めに知音ちいんを得ざるを恨みしが爲めなり。夫人。われは今おん身が上を語れり。タツソオが事を言はず。
何ぞ必ずしも 知音ちいんを求めんや。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
なし流れ/\て嘉川家へいり込しに當時嘉川の評判ひやうばんあしき故おのづから知音ちいんの人もとほざかりしにより常陸ひたち筑波つくば山の近邊に少しの知音を便たより行んと千住へ出筑波をさして急ぎしが先江戸近邊きんぺん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
知音ちいん法筵ほうえんに列するためであつた。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
話頭はなしかはりて爰に松田の若黨わかたう吾助は主人喜内を討果うちはたしてかねての鬱憤うつぷんを散じ衣類一包みと金子二百兩を盜み取やみに紛れて備前國岡山を立去しが豐前國ぶぜんのくに小倉こくらの城下に少しの知音ちいん有ければ此に便りて暫く身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)