相済あいす)” の例文
旧字:相濟
私は相済あいすまなくもあるが、その顔つきがまたおかしくてたまらないので、時にはわざと意地悪をして喰べてしまうこともあった。
文壇昔ばなし (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ひと三河武士みかわぶしの末流として徳川累世るいせい恩義おんぎに対し相済あいすまざるのみならず、いやしくも一個の士人たる徳義とくぎ操行そうこうにおいて天下後世に申訳もうしわけあるべからず。
彼は、歓ぶ春生達と、貧しい食事を済ますと、万一にも迷惑をかけては相済あいすまぬから、当分遠ざかって考えると、老人にささやいて小屋を去った。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
誠にとんだ負傷けがいたしまして……うも相済あいすみませぬことでございます、お蔭様かげさま父子おやこの者が助かります、はい/\……。
実はあざむいて人を試験するようなもので、徳義上におい相済あいすまぬ罪なれども、壮年血気の熱心、みずから禁ずることが出来ない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
大原「御令妹の前で甚だ相済あいすまんけれども折角の御馳走を戴くために今はかまいで帯をゆるめる。先刻さっきから帯が腹へ喰い込んで痛くって堪まらない。帯を ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ヘエ、相済あいすみません。お滝はどうせ百まで生きていたって、人様のためになる人間じゃないが、清水屋の娘のお君が可哀想でなりません。それをねらって爪を
名前を表わして相済あいすまんと思いますが、明治年代の書家中林梧竹なかばやしごちくという人は、毎日朝起きると五百字いつも手習いをするとかいう話を私は聞いておりました。
現世げんせ何一なにひと孝行こうこうらしいこともせず、ただ一人ひとり先立さきだってこちらの世界せかい引越ひきこしてしまったのかとかんがえますと、なんともいえずつらく、かなしく、のこしく、相済あいすまなく
然し彼はまず、絶対な自己の正義観と、士道の常識から見て、今度の主君の為された行動を、世上に向って相済あいすまないことと、主君に代ってびたい気もちでいっぱいであった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうも相済あいすみません」栗原は、わしの顔を見るなり、ペコリと頭を下げた。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「知っているとも。昔は武家だったそうだな、松平まつだいらという祖先の姓を名乗っては、相済あいすまないというので、松平を引っくり返して平松屋は、義理堅ぎりがたいようなふざけた話だ」
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
買いましょう。お登和さん御勘免おかんべんなさって下さい、とんだ物を持って来て相済あいすみません
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
その話は相済あいすみ、その後も相替あいかわらず真面目に家を治めて著書飜訳ほんやくの事をつとめて居ると、存外に利益が多くて、マダその二人の小供が外国行の年頃にならぬ先きに金の方が出来たから
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ツイいろいろのことをおたずねして相済あいすまぬことでございました。
今から考えるとまことに相済あいすまぬことをしたと思う。
『地球盗難』の作者の言葉 (新字新仮名) / 海野十三(著)
他人に対して金銭の不義理は相済あいすまぬ事と決定けつじょうすれば、借金はます/\怖くなります。私共の兄弟姉妹は幼少の時から貧乏の味をつくして、母の苦労した様子を見ても生涯忘れられません。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
何? 銭形の親分? そいつは知らなかった、——相済あいすみません。
へえ、どうも相済あいすみませんでございました。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)