異人いじん)” の例文
又一異人いじんというべし。魔王のごとく、道人どうじんの如く、策士の如く、詩客しかくの如く、実に袁珙えんこう所謂いわゆる異僧なり。の詠ずるところの雑詩の一にいわ
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
装甲車の上にいた異人いじんが四人、五人、風にさらわれたように吹きとばされたのである。とまたつづいて四、五人が、下にもんどりうってつきおとされた。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ことに、フロックコオトに山高帽子やまたかぼうしをかぶった、年よりの異人いじんが、手をあげて、船の方を招くようなまねをしていたのは、はなはだ小説らしい心もちがした。
出帆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
異事いじともけいおなじうするをはかり、異人いじんともおこなひおなじうするをめば、すなはもつこれかざつて・そこなかれ。ともしつおなじうするらば、すなはあきらかにしつきをかざれ。
異人いじんとの掛け合ひに骨を折つて居るのに、駒形の留守宅では、叔父の深田琴吾きんごといふのが、家來の山家をの三郎と腹を合せ、おめかけのお新といふ女を立てて、奧方の浪乃なみの樣を
それやあ、秋繭あきまゆの時ゃあよかったさあ。だが、いつも柳の下にどじょうはいねえってやつだ。百貫目もかついで行った荷が、今度あ二束三文どころか、何処の異人いじんめも、値もつけやがらねえんだ。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒船渡来と浦賀うらがの海防ならび異人いじん上陸接待のじょうを描ける三枚絵はまげひげとの対照、陣笠じんがさ陣羽織と帽子洋服との配列まことにこれ東西文化最初の接触たり。慶応義塾図書館にはこれらの錦絵を蔵する事多し。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
みづはなれて、すれちがつて、背後うしろなる木納屋きなやてかけたすうぽん材木ざいもくなかえた、トタンにみとめたのは、緑青ろくしやうつたやうなおもてひかる、くちとがつた、手足てあし枯木かれきのやうな異人いじんであつた。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「僕なら忘れないんだが、異人いじんだから忘れちまったんです」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なにしろその異人いじんたちはなかなか力があって、マルモ探検隊員は圧迫されがちであった。その上に人数も相手の方が倍ぐらい多いのである。形勢はよくない。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
帰りぎわに、ふりむいて見たら、例の年よりの異人いじんは、まだ、ぼんやり船の出て行った方をながめている。
出帆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
暮れると同時に、異人いじんの中から一人が立ち上った。と、彼のからだがほたるいかのように光った。全身に、光の点々があちらこちらにあらわれ、それが明滅めいめつする。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
発音が同じで、文字が違う同発音異人いじんという者もないではないが、仏天青という文字以外に、常識的に使われる文字は、そうないのであった。この上のことは、彼女に会って聞くより仕方がない。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)