産聲うぶごゑ)” の例文
新字:産声
實に此の人生に自分が生れたといふことも容易ならない事件でないか。此の死の世界の中に自分がそもそも産聲うぶごゑを擧げたといふのも實に強い聲ではなかつたか。
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
君も、父も、戀も、なさけも、さては世に産聲うぶごゑ擧げてより二十三年の旦夕に疊み上げ折重ねし一切の衆縁、六尺の皮肉と共に夜半よはの嵐に吹き籠めて、行衞も知らぬ雲か煙。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
かぜんでもあめにもらず……はげしいあつさにられなかつた、唯吉たゞきち曉方あけがたつてうと/\するまで、垣根かきね一重ひとへへだてながら、産聲うぶごゑふものもかなかつたのである。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
といふこと産聲うぶごゑをあげたときから何故なにゆゑとなくにしみて、いろ/\しみもひましやうけれど、そつくりれかゞつてくとでもつたらわたし強情がうじやうてゝとりついて
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
昨年さくねんくれおしつまつてから産聲うぶごゑをあげて、はじめて此赤このあかかほせてれましたときわたしはまだ其時分そのじぶん宇宙うちうまよふやうな心持こゝろもちたものですから、いまおもふとなさけないのではありますけれど
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分は暗い水ぼつたいじめじめした所から産聲うぶごゑをあげたけれども
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
長吉ちようきち門前もんぜん産聲うぶごゑげしものと大和尚夫婦だいおしようふうふ贔屓ひゐきもあり、おな學校がくかうへかよへば私立しりつ私立しりつとけなされるもこゝろわるきに、元來ぐわんらい愛敬あいけうのなき長吉ちようきちなればこゝろから味方みかたにつくものもなきあはれさ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
心から出る産聲うぶごゑをあげる處だ
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)