生擒いけど)” の例文
「太史慈が今、ついそこで、敵の孫策と一騎打ちしているが、いつ勝負がつくとも見えません。くご加勢あれば、生擒いけどれましょう」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ややあって軍吏ぐんりの一人が口を切り、先年浞野侯さくやこう趙破奴ちょうはど胡軍こぐんのために生擒いけどられ、数年後に漢にげ帰ったときも、武帝はこれを罰しなかったことを語った。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
晴の場所となると、ただでさえもじもじする。ところへもって来て、突然坑夫の団体に生擒いけどられたんだから、この黒いかたまりを見るが早いか、いささか辟易ひるんじまった。それも、ただの人間ならいい。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
われは世にのがれぬ罪のあればこそ今は仏に生擒いけどられけれ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
「いや、お手柄でございましたな。——ところで甚だ失礼ながら、あの人攫いは容易ならぬ手きき、なかなかもって普通の事では、取りおさえることは出来ませぬ。いかが致して貴所様には、生擒いけどり致してございますな?」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
八重の潮路の海鳥うみどりの沖の太夫たいふ生擒いけどりぬ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「あれば生擒いけどつて銭儲ぜにもうけだ。」
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
藤判官邦通とうのほうがんくにみちは、注進の状を、高らかに読みあげた。——海戦の状況、相互の死傷、生擒いけどった平家方の諸大将の名までつぶさであった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬から顛落てんらくした彼の上に、生擒いけどろうと構えた胡兵こへいどもが十重二十重とえはたえとおり重なって、とびかかった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
猛虎も動物園に入れば糞豚ふんとんの隣りに居を占め、鴻雁こうがんも鳥屋に生擒いけどらるれば雛鶏すうけいまないたおなじゅうす。庸人ようじん相互あいごする以上はくだって庸猫ようびょうと化せざるべからず。庸猫たらんとすれば鼠をらざるべからず。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「殺されたのか? 生擒いけどられたのか?」
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
見るからに弱々しい一名の敵を、大勢して、さも手柄顔に生擒いけどって来た味方の将士も、むしろ不快とするような順昭の語気だった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「見よ、明日はかならず国王孟獲もうかくが自身でこれへ攻め寄せてくるにちがいない。——おのおの手につばして、これを生擒いけどりにせよや」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ついてはまた、貴下の軍は、これより何処へ参らるるか。そして、あれなる檻車かんしゃにある人間は、賊将の張角でも生擒いけどってこられたのであるか
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「すでに今、三度まで、予は汝を生擒いけどった。この上は約束をんで、汝の首を斬って放たん。孟獲何か云い置くことはないか」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この上は、十八ヵ国の諸侯を一手として、遠巻きに攻め縮め、彼の疲れを待って、一斉に打ちかかり、生擒いけどりにでもするしか策はありますまい
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まだ? ……いやいや、頑としてなお、この城は支えられます。のみならず、曹操を生擒いけどりにするのも、さして難かしいことではありません」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もし、曹操を生擒いけどってきた者あらば、万戸侯ばんここうに封じ、その首を丞相府に献じくる者には、千金の賞を与えるであろうと」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それ見ろ。ご存じならば、告文など発せられるわけはない。いでこの上は、彼奴を生擒いけどって都へさし立て、そのうえで丞相のお沙汰をうけよう」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
囲碁には破れてもいまや敵城は余命旦夕よめいたんせき、関羽を生擒いけどることも神算歴々と、心に大きな満足がべつにあったからである。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いやゆうべ、それがしの手に、敵の一将黄祖という者を生擒いけどってありますから、生ける黄祖を敵へ返して、大殿おおとのの屍を味方へ乞い請けましょう」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
死地へやるのは惜しい。——また、もっと惜しいのは、敵ながら太史慈たいしじという人物である。あれは生擒いけどりにして、味方に加えたいと望んでおるのだが
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「城中に入って、楊陵ようりょうによく利害を説き、夏侯楙かこうも生擒いけどってくだり給え。それは貴公のみならず親友の為でもあろう」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此方、先鋒に立ってまたたくまに洛陽へ攻め入り、董相国とうしょうこく生擒いけどって、諸侯の階下にひきすえてお見せ申さん
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それがしの留守と見、横山城は夜襲をうけていました。もとより直ちに撃退しましたが、その折、生擒いけどった敵方の勇僧に、宮部善性坊みやべぜんしょうぼうなるものがおりました」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先頃、知らせを受けていた怪しげな関東者を、奈良で見つけ、やっと紀見の上で、生擒いけどったのでござる。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうでしょう。なにしろ夏侯楙かこうもは魏の駙馬ふばですからね。それだけに彼一名を生擒いけどれば、爾余じよの大将を百人二百人からるにもまさります。よい計はないものでしょうか」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よわいもすでに七じゅんを越されているのに、きょうの戦場で三人の若い大将を討ち、一人の大将を生擒いけどってこられるなど、まったく壮者も及ばぬお働き、実に驚き入りました。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
横浜で屈指といわれる豪商でも、ここぞと思う大商おおあきないをする時は、船の碇泊ていはく期間だけ、目ぼしい外人を生擒いけどっておくため自分の妻、めかけ、娘さえ提供するのがあるというほどに。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「孔明、すでに荊州を取る。荊州の城にいた魏の長史陳矯ちんきょうは、城に旗の揚がるよりも先に、孔明に生擒いけどられてしまったにちがいありません。兵符は常に、陳矯が帯びていたものです」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もちろん証拠の一書も見せ、生擒いけどった密使の口書きもつぶさに示しての上である。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「待てとは、生擒いけどれという仰せだろう。分ってる分ってる」と、どなった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「東軍の御大将、あれに流れついてわすぞ、つつんで、生擒いけどれや」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「オッ、喜左衛門どのか。おぬしまで生擒いけどられて来たか」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ござんなれ。きょうこそ、将門を生擒いけどりにしろ」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「や。生擒いけどりとなられたか」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「官兵だっ、生擒いけどれっ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)