狂犬やまいぬ)” の例文
「承知するもしないもございません。少しいやな顔をしても喧嘩けんかを吹っかけられます。あの六郎さんという人は狂犬やまいぬのような人間で——」
「いったい、この村のやつらが悪い、あんな性質たちの悪い狂犬やまいぬを放し飼いにしておくのがよろしくねえ、叩き殺してしまやがりゃいいんだ」
余り見かねたから、背後うしろ向きになっていたがね、出しなに見ると、狂犬やまいぬはそのまま膝枕で、例の鼾で、若い手代はどこへ立ったか居なかった。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おのれ人間ひとの子をきずつけながら、まだ飽きたらでたけり狂ふか。憎き狂犬やまいぬよ、今に目に物見せんず」ト、ひき立て曳立て裏手なる、えんじゅの幹につなぎけり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
……おお静かになったが……ここはもう筑波の社領内だが、狂犬やまいぬめ、そんなことも考えて居れなくなったと見える。
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
ほ、ほ、ほ、まあ、何と、江戸名うての、広海屋、長崎屋——二軒の旦那衆が、狂犬やまいぬのようなつかみあい、食いつき合い——おもしろいのう! いさましいのう! ほ、ほ、ほ、ほ!
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「承知するもしないも御座いません。少し厭な顏をしても喧嘩を吹つかけられます。あの六郎さんといふ人は狂犬やまいぬのやうな人間で——」
いや、黒服の狂犬やまいぬは、まだめかけの膝枕で、ふんぞり返って高鼾たかいびき。それさえ見てはいられないのに、……その手代に違いない。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……おお静かになったが……此処はもう筑波の社領内だが、狂犬やまいぬめ、そんなことも考えておれなくなったと見える。
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
ムク犬は決して狂犬やまいぬになったわけではない。主人の危急を救わんとして狂犬にさせられてしまったのでありました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
狂犬やまいぬのようにいやがられている連中、それを、何とまあ、二人一度に征討して、外へほッぽり出してしまったのだから、おまはんの、底ぢからは、程が知れないね——ところで、法印さん——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
手前てめえの顔は、お内儀へ喰い付きそうだったぜ、——高力左近様より、手近にもっと怖い狂犬やまいぬがいると言ってやりたかったが、したよ」
「うむ、何だよ、その娘の跡をけまわしてな、からいやがられ切ってる癖に、狂犬やまいぬのような奴だ、来たかい! 弱ったな、どうも、うぬ一人で。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仏頂寺弥助が冷笑して過ぎて行くところへ、いったん、沈んだ狂犬やまいぬが浮き上って、岸の方へ泳いで来るから
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それも狂犬やまいぬだ。
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
から段々落ちに、酒も人間も悪くなって、この節じゃ、まるで狂犬やまいぬのようですから、何をどう食ッてかかろうも知れませんや。なんしろ火の玉なんでね。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どこの畜生だか知らねえが、人をおどかしやがる畜生だ、この近所ではついぞ見かけたことのねえ畜生だが、いやはや、馬鹿と狂犬やまいぬほど怖いものはないと太閤様が申しました」
昔のお静の朋輩ほうばいお町、それは、無抵抗で優しいお静にだけはかぶとを脱いでおりますが、外の女が平次に指でも差そうとしたら、狂犬やまいぬのようにい付いてやろうという恐ろしい女です。
それも狂犬やまいぬだ。
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
罪滅つみほろぼしのためだと思って母親の持った亭主は——間黒源兵衛——渾名あだな狂犬やまいぬという、花川戸町の裏長屋に住む人入稼業、主に米屋の日傭取ひようとりを世話する親仁おやじ
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実は今そこで、おそろしく強い狂犬やまいぬ出逢であったものだから、逃げ場を失って、こんな始末さ。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
昔のお靜の朋輩ほうばいお町、それは、無抵抗で優しいお靜にだけはかぶといで居りますが、外の女が平次に指でも差さうとしたら、狂犬やまいぬのやうに喰ひ付いてやらうといふ恐ろしい女です。
じつの安きいとまもないので、お絹は身も心も疲れ果てて、その一月ばかり前から煩い出し、床に就いて足腰の自由が利かなくなると、夫狂犬やまいぬ源兵衛は屋外にこれを追出した。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しようじゃないか、あん畜生はホントに狂犬やまいぬになったんで通る人の見さかいもなく、ああして噛みつくんだ、うっかり傍へ寄ると危ねえ、早くお役所へ沙汰をしようじゃないか
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
暗がりをくわ楊枝ようじ、月夜には懐手で、呑気のんき歩行あるいてると、思いがけねえ狂犬やまいぬめが噛附かみつくような塩梅あんばいに、突然いきなり、突当る奴がある、引摺倒す奴がある、拳固でくらわす奴がある
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
犬にわれたな、狂犬やまいぬだろう、大きな犬だ、あれに逐いつめられて木の上へ登って、そこから助けを呼んでいるというのは笑止しょうしなことだ、その声を聞けば子供でもないようだが
「和尚様、狂犬やまいぬが飛び込みましたぜ、西の方から牢破りをして逃げた狂犬ですぜ、それが今、このお寺の中へ逃げ込んでしまいました、だからこうして追い飛ばしているのでございます」
……はじめは蜘蛛くもの巣かと思ったよ、とそうおいいなさるものですから、狂犬やまいぬでなくて、お仕合せ、蜘蛛ぐらい、幽霊も化ものも、まあ、大袈裟なことを、とおかしいようでございましたが
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この品位ある若殿原わかとのばらが、寺男の米友風情に、こうまで罵られて言句がつげないのか、また、日頃、親切で正直な男が、まるで狂犬やまいぬみたように、どうして一見の人にガミガミ噛みつくのだか
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それからの狂犬やまいぬが、条理すじ違いの難題といっちゃ、聞いていられなかったぜ。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
狂犬やまいぬが、あっちへ行った、人食ひとくらいぬが、あの若い侍に食いついてらあ」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「お前さん、狂犬やまいぬえられたとお言いなすったね」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
狂犬やまいぬだろう、ち殺してくれべえぞ!」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ええ、狂犬やまいぬでございます」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「こん畜生、狂犬やまいぬだな」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ソレ狂犬やまいぬだ!」