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激浪
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げきらう
鮏こゝにいたりて
激浪にのぼりかねて
猶予ゆゑ、
漁師ども
仮に
柴橋を
架わたし、
岸にちかき
岩の上の雪をほりすてこゝに居てかの
掻網をなす。
天は
暗い、
地も
暗い、
海の
面は
激浪逆卷き、
水煙跳つて、
咫尺も
辨ぜぬ
有樣、
私は
氣も
氣でなく、
直ちに
球燈を
點じて
驅け
出すと、
日出雄少年も
水兵等も
齊しく
手に/\
松明をかざして
偶には
激浪怒濤もあつて
欲しい、
惡風暴雨もあつて
欲しい、と
云つて
我輩は
決して
亂を
好むのではない、
只だ
空氣が五
日の
風に
由て
掃除され、十
日の
雨に
由て
淨められんことを
希ふのである。
下界を
見ると
眼も
眩むばかりで、
限りなき
大洋の
面には、
波瀾激浪立騷ぎ、
數萬の
白龍の
一時に
跳るがやうで、ヒユー、ヒユーと
帛を
裂くが
如き
風の
聲と
共に、
千切つた
樣な
白雲は
眼前を
掠めて
飛ぶ