殊勝けなげ)” の例文
弦月丸げんげつまる運命うんめい最早もはやぷん、二ふん甲板かんぱんにはのこ一艘いつそう端艇たんていい、くなりては今更いまさらなにをかおもはん、せめては殊勝けなげなる最後さいごこそ吾等われらのぞみである。
お若は面白いこともなくて毎日勤行を怠らず後世ごせ安楽を祈っているので、近所ではお若の尼が殊勝けなげなのを感心して、中にはその美しい顔に野心をいだ
取なといはるゝに忠右衞門殊勝けなげにも然らば父上ちゝうへ御免をかうむり御先へ切腹仕つり黄泉くわうせん露拂つゆはらひ致さんといさぎよくも短刀たんたうを兩手にもち左の脇腹わきばらへ既に突立つきたてんとする折柄をりから廊下らうか
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
善は急げと支度したくして、「見事金眸が首取らでは、再び主家しゅうかには帰るまじ」ト、殊勝けなげにも言葉をちかひ文角牡丹にわかれを告げ、行衛定めぬ草枕、われから野良犬のらいぬむれに入りぬ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
殊勝けなげなこと、こうも立派な果し状を人につけるようになったとは。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いまそのうるはしく殊勝けなげなる夫人ふじんが、印度洋インドやう波間なみまえずなつたといては、他事ひとごとおもはれぬと、そゞろにあわれもようしたる大佐たいさは、暫時しばらくしてくちひらいた。
じつに、きみ經歴けいれき小説せうせつのやうです。』とつたまゝ暫時しばしわたくしかほながめてつたが、物語ものがたりうちでも、春枝夫人はるえふじん殊勝けなげなる振舞ふるまひには、すくなからずこゝろうごかした樣子やうす