死切しにき)” の例文
どこまでも執着しゅうじゃくつよわたくしは、自分じぶん家族みうちのこと、とりわけ二人ふたり子供こどものことがにかかり、なかなか死切しにきれなかったのでございます。
一番最後に『タチアナ姫は一弾を受けたるも死切しにきらざりし為、彼等は銃床を以て之を撲殺したり。』と、ありました。
たちあな姫 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
私が死んだらさぞお前が楽々らく/\すると思うから、本当に私は一時いちじも早く楽に死度いと思うが、何うも死切しにきれないね
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
茂兵衛 なあに死切しにきりじゃござんせん。やがて、この世へ息が戻る奴ばかり。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
ほゝくちびる薔薇ばらせて、蒼白あをじろはひかはる。まどもはたとづる、生活いのちがついれてときのやうに。どこも/\硬固しゃちこばって、つめたうなって、自在じざい活動はたらきをばうしなうて、死切しにきったやうにもえう。
アヽおい源八げんぱちさん、源八げんぱちさん、アヽ死んだ、うも此金このかねがあるんで今迄いままで死切しにきれずにたんだナ
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
さて、この死切しにきったらしいすがたで四十二ときつときは、氣持きもちねむりからむるやうに、自然しねんきさッしゃらう。しかるに、翌朝あくるあさ、あの新郎殿むこどのおことむかひにとてするころは、おことちゃうんでゐる。
おれも死のうと云うと一緒なら死花しにばなが咲くと云ったじゃないか、己は死後しにおくれて死切しにきれないからようやどてへ上って、吾妻橋から飛込もうと思って来た処が、まだ人通りがあって飛こむ事もならねえから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)