歯噛はがみ)” の例文
旧字:齒噛
云い返そうと思うけれど吃る癖が出たから、それが邪魔をして反対に云いくるめられるのは必定、歯噛はがみをした団兵衛
だだら団兵衛 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
米友は歯噛はがみをしました。僅かの間に畜生どもにばかにされたかと思うと、米友の気象ではたまらないのであります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
夏姫を娶ろうとして巫臣にとめられ、結局其の巫臣に女をさらわれて了った楚の子反は歯噛はがみをして口惜しがった。
妖氛録 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「訊くな。訊くな。汚らはしい。わし達を侮辱してゐる。わしばかりではない、お前までも侮辱してゐるのだ。」と、歯噛はがみをしないばかりに激昂してゐるのだつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
塚田巡査は歯噛はがみをした。微傷かすりきずではあるが、の手首からは血が流れていた。の二三人も顔や手の傷を眺めながら、失望と疲労との為に霎時しばらく茫然ぼんやりと立っていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ふるえてはかまの間へ手を入れ、松蔭大藏は歯噛はがみをなして居りましたが、最早詮方せんかたがないと諦め、平伏して
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
とて越中ゑつちうかしらでゝしたあかくニヤリとわらひ、ひとさしゆび鼻油はなあぶらひいて、しつぺいはらんと歯噛はがみをなし立上たちあがりし面貌つらがまへ——と云々うんぬんかくてこそ鬼神きじん勇士ゆうし力較ちからくらべも壮大そうだいならずや。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ガニマール刑事は無念の歯噛はがみを食いしばって口惜くやしがった。
もう歯噛はがみをしても間に合わない。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「訊くな。訊くな。けがらわしい。わし達を侮辱している。わしばかりではない、お前までも侮辱しているのだ。」と、歯噛はがみをしないばかりに激昂げっこうしているのだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
忠一も歯噛はがみをして追った。重太郎は狐のように雪を飛んで、早くも門外まで逃げ去った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
呼吸いきの下でいって、いい続けて、時々歯噛はがみをしていた少年は、耳をすまして、聞き果てると、しばらくうっとりして、早や死の色の宿ったる蒼白そうはくおもてやわらげながら、手真似てまねをすること三度ばかり。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……いきおいはさりながら、ものすごいくらい庭の雨戸を圧して、ばさばさ鉢前の南天まで押寄せた敵に対して、驚破すわや、かかれと、木戸を開いて切ってづべき矢種はないので、逸雄はやりおの面々歯噛はがみをしながら
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「無論、𤢖です。𤢖の仕業です。」と、市郎は歯噛はがみをした。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
青年わかもの半狂乱はんきやうらんていで、地韜ぢだんだんで歯噛はがみをした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)