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最愛
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さいあい
彼が
最愛の
父濱島武文は、
遙なる子ープルスで、
今は
如何なる
夢を
結んで
居るだらう、
少年が
夢にもかく
戀ひ
慕ふ
母君の
春枝夫人は、
昨夜海に
落ちて、
遂に
其行方を
失つたが
子爵の
君最愛のおもひ
者など、
桐壼の
更衣めかしき
優さ
形なるが、
此奧方の
妬みつよさに、
可惜花ざかり
肺病にでもなりて、
形見の
止めし
令孃ならんには、
父君の
愛いかばかり
深かるべきを
成程私が
今朝未明に
櫻木大佐等と
共に
家を
去つたのは、
未だ
少年が
安らかなる
夢を
結んで
居つた
間で、
其後に
目醒めた
彼は、
例とちがひ
私の
姿も
見えず、また
最愛の
稻妻も
居らぬので
置ては
別莊守りの
夫婦のみなれど
最愛の
娘病氣との
事なり
本宅よりの
使ひ
絶ま
無ければ
事によそへて
杉原のこと
問はするに
本宅にも
此頃さらに
參り
給はずといふ
左るにても
何とし
給ひしにや
我心を