春永はるなが)” の例文
春永はるながとはいえ、もう往来の土に冷たい影が細長く倒れて、駿河台するがだいの森の烏の群れがさわぎ出したのに男はまだそこらをぶらついている。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
つづいて十一月には一番目『太功記たいこうき馬盥ばだらいより本能寺ほんのうじ討入まで団洲だんしゅう光秀みつひで菊五郎春永はるながなり中幕団洲の法眼ほうげんにて「菊畑きくばたけ」。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
長「おめえさんのとこあんまり御無沙汰になって敷居が鴨居でかれねえから、いず春永はるながに往きます、くれの内は少々へまになってゝ往かれねえから何れ…」
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おたが杓子か、お玉杓子かなどといい出すと、何だか外郎売ういろううり台詞せりふのようになって来て、甚だ事面倒だから、そんな問題は春永はるながの節に譲ってよろしい。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
多くでは無しそれだけで此処の始末がつくなれば、理由わけを聞いて厭やは仰せらるまじ、それにつけても首尾そこなうては成らねば、今日は私は帰ります、又の宿下りは春永はるなが
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかし、さも楽しそうに筆を動かしては楊枝ようじをかんでながめているのを、そばで黙って見ているのがなんとなく気持ちがよかった。そこにはいつものどかな春永はるながの空気があった。
亮の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
議論はいずれ春永はるながとして、私の探偵小説から捕物小説への遍歴はかくのごとくである。
おほくではれだけで此處こゝ始末しまつがつくなれば、理由わけいてやはおほせらるまじ、れにつけても首尾しゆびそこなうてはらねば、今日けふわたしかへります、また宿下やどさがりは春永はるなが
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「まあ、そんなことは、いづれ春永はるながに伺ふことにして、手紙の文面は」
親類しんるいかほうつくしきもければたしとおもねんもなく、裏屋うらや友達ともだちがもとに今宵こよひ約束やくそく御座ござれば、一まついとまとしていづ春永はるなが頂戴ちやうだい數々かず/\ねがひまする、をりからお目出度めでたき矢先やさき
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
せめて春永はるながにでもなったら——と、一日延しに延していたのです。
せめて春永はるながにでもなったら——と、一日延しに延していたのです。
裏屋の友達がもとに今宵約束も御座れば、一先お暇として何れ春永はるながに頂戴の數々は願ひまする、折からお目出度矢先、お歳暮には何ほど下さりますかと、朝より寢込みて父の歸りを待ちしは此金これなり
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)