きゅう)” の例文
旧字:
当時、諭吉はきゅう中津藩なかつはんの士族にして、つと洋学ようがくに志し江戸に来て藩邸内はんていないに在りしが、軍艦の遠洋航海えんようこうかいを聞き、外行がいこうねんみずから禁ずるあたわず。
science ではどうだか知らないけれども、精神界では全く同じものが二つは来ない。故にいくら旧様きゅうようを守ろうとしても、全然きゅうには復らない。
無題 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
銀座のきゅう日報社の北隣きたどなり——今は額縁屋がくぶちやになっている——にめざましと呼ぶ小さい汁粉屋しるこやがあって、またその隣に間口二けんぐらいの床店とこみせ同様の古本店があった。
一日一筆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ある大きな本家では、いつもきゅうの八月のはじめに、如来にょらいさまのおまつりで分家の子供らをよぶのでしたが、ある年その一人の子が、はしかにかかってやすんでいました。
ざしき童子のはなし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
第六十三条 現行ノ租税ハ更ニ法律ヲもっこれヲ改メサルかぎりきゅうこれヲ徴収ス
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
然し汽車は釧路くしろまで通うても、駒が岳は噴火しても、大沼其ものはきゅうって晴々はればれした而してしずかな眺である。時は九月の十四日、然し沼のあたりのイタヤかえではそろ/\めかけて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
宇治は身構えた姿勢を次第にきゅうに戻しながら、鼻筋にふとつんと突き上げるものを感じていた。しかしそれも瞬間のことで、彼は変に不機嫌な表情を作り、そして床の上の男を振り返った。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
小径の片側には園内の地を借りて二階建の俗悪な料理屋がある。その生垣につづいて、傾きかかった門のひさしには其文字も半不明となった南畝の匾額へんがくきゅうって来りおとなう者の歩みを引き留める。
百花園 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ブレーメンかキール軍港ぐんこうのあたりまで行かなければ満足しないのか、それともドイツの占領地帯で、お手近てぢかのドーヴァ海峡かいきょうを越えてきゅうフランス領のカレーあたりへ上陸しただけでも差支さしつかえないのか
その挙止きょし活溌かっぱつにして少しも病後びょうご疲労ひろうてい見えざれば、、心の内に先生の健康けんこう全くきゅうふくしたりとひそかに喜びたり。
この論法からいうと、芸術家が昔の芸術を後世に伝えるために生きているというのも、不見識ふけんしきではあるが、やっぱり必要でしょう。ことにきゅう芝居や御能おのうなんかはいい例です。絵画にもそれがある。
無題 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先生咸臨丸かんりんまる米行べいこうきょありと聞て、予が親戚しんせき医官いかん桂川氏かつらがわしかいしてその随行ずいこうたらんことを求められしに、予はこれさいわいの事なりと思い、ただちにこれをがえんじ、一けんきゅうのごとし。