數寄すき)” の例文
新字:数寄
いまは、容子ようすだけでもうたがところはない……去年きよねんはるなかごろから、横町よこちやう門口かどぐちの、數寄すきづくりの裏家うらやんだ美人びじんである。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お弓町の宇佐美直記の屋敷は、さして廣くはありませんが、なか/\に數寄すきを凝らした構へで、宇佐美家の裕福らしさを端的に物語つてをりました。
廣い家には道臣も昔から慣れてゐたけれど、網島の邸の内部の數寄すきらしたのと、美しい小間使たちの多いのとには、キヨロ/\して京子にたしなめられることも多かつた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
都女みやこをんな數寄すきこむる
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
有合せの庭下駄を突つかけて、泉石の數寄すきこらした庭に降りて行くと、突き當りは深い植込みがあつて、それをグルリと拔けると、不淨ふじやう門が嚴重に黒板べいに切つてあります。
くツきりとした頸脚えりあしなが此方こなたせた後姿うしろすがたで、遣水やりみづのちよろ/\と燈影ひかげれてはしへりを、すら/\薄彩うすいろ刺繍ぬひとりの、數寄すきづくりの淺茅生あさぢふくさけつゝ歩行ひろふ、素足すあしつまはづれにちらめくのが。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
數寄すきを凝した庭をめぐらして、木戸もへいも恐ろしく嚴重な上に、住居の木戸も頑丈で、鼠一匹もぐり込めさうもない構へは、さすがに山の手屈指の分限者ぶげんしやだけのことはあります。
そろつて浮足うきあしつて、瑪瑙めなうはしわたると、おくはうまた一堂いちだう其處そこはひると伽藍がらん高天井たかてんじやう素通すどほりにすゝんで、前庭ぜんていけると、ふたゝ其處そこ別亭べつていあり。噴水ふんすゐあり。突當つきあたりは、數寄すきこらしてたきまでかゝる。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と思つた時は、まるつ切り見當も付かぬ家の前——深い木立の中の一軒屋、それは丁度大名の下屋敷の離屋はなれと言つた、小さいが數寄すきこらした家の庭先へ擔ぎ入れられて居たのです。
立止つて、恐ろしく泉石の數寄すきを凝らした、俗惡極まる庭を眺めてをります。