つかみ)” の例文
ピシャリと、柿丘の頬に、まぬるいものが当ると、耳のうしろをかすめて、手帛ハンカチらしい一つかみほどのものがパッとひるがえって落ちた。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つかみの半襟地を窓明りにかざしては元の位置へ置き、又他の一つかみを取上げて同じ事を繰返して居た。と、或刹那、彼は不思議な事を見付け出した。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
平次は一とつかみの錢と小粒をぜて馬吉の膝小僧の下にならべたのです。額は二分以上あつたでせうが、馬鹿に取つては、一貫の上は二貫でなければなりません。
女は台の一方へ、このかたなしの江戸ッ児を差置いて、一方へお雪を仆した真中まんなかへぬッくと立ち、袖短そでみじかな着物の真白まっしろな腕を、筵の上へ長く差しのばして、ざくりと釘を一トつかみ
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぶら/\遊んで居るから本石町ほんこくちょう四丁目の松田と云う貸本屋へ奉公にりましたが、松田が微禄いたして、伯父の処へ帰って遊んでいるから、少し烟草を売るがいゝと云うので、つかみ煙草を風呂敷に包み
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うませなはらかはゆるめてあせもしとゞにながれんばかり、突張つツぱつたあしもなよ/\として身震みぶるひをしたが、鼻面はなづらにつけて、一つかみ白泡しろあは吹出ふきだしたとおもふと前足まへあしらうとする。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あの内儀は病身でしなびて、一とつかみほどしか無い、背の高さは精々四尺六七寸かな」
「黙って、見るこッた、折角お珍らしいのに言句もんくをいってると古くしてしまう。」といいながら、急いで手巾ハンケチほどいて、縁の上に拡げたのは、一つかみ、青いこけの生えた濡土である。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つかみひしぐが如くにして突離つきはなす。初の烏、どうと地に坐す。三羽の烏はわざとらしく吃驚きっきょう身振みぶりをなす。)地をふ烏は、鳴く声が違ふぢやらう。うむ、うぢや。地を這ふ烏は何と鳴くか。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つかみひしぐがごとくにして突離す。初の烏、どうと地にす。三羽の烏はわざとらしく吃驚きっきょう身振みぶりをなす。)地をう烏は、鳴く声が違うじゃろう。うむ、どうじゃ。地を這う烏は何と鳴くか。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
湯宿々々に埋伏まいふくして、妖鬼ようきごとを圧したが、日金颪に気候の激変、時こそ来たれと万弩まんど一発、驚破すわ! 鎌倉の声とともに、十方から呼吸を合はせ、七転八倒のさわぎに紛れて、妻子珍宝つかみ次第。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)