捻向ねぢむ)” の例文
婦人はとにもかくにも遣過やりすごせしが、又何とか思直おもひなほしけん、にはかに追行きて呼止めたり。かしら捻向ねぢむけたる酔客はくもれるまなこと見据ゑて、われひとかといぶかしさにことばいださず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
捻向ねぢむいて、痩按摩やせあんまこしかゞめながら、ちやう足許あしもとに一だいあつた……瓦斯燈がすとうを、其處そこころがつた、ごろたいしなりにカチ/\とつゑらした。がおとひゞかず、もやしづむ。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
きはめてせま溝板どぶいたの上を通行の人はたがひに身をなゝめに捻向ねぢむけてちがふ。稽古けいこ三味線しやみせんに人の話声はなしごゑまじつてきこえる。洗物あらひものする水音みづおときこえる。赤い腰巻こしまきすそをまくつた小女こをんな草箒くさばうき溝板どぶいたの上をいてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
三人みたりとも歩始あゆみはじめぬ。貫一は外套オバコオトの肩を払はれて、うしろ捻向ねぢむけば宮とおもてを合せたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
中親仁ちうおやぢだつた。車夫くるまやは、楫棒かぢぼうげたまゝ捻向ねぢむいて
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
頭を捻向ねぢむけて満枝に対せる鴫沢の顔の色は、この時ことさらに解きたりと見えぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)