持上もちあ)” の例文
彼はそれを防ぐように左肩を高く持上もちあげ鼻の先に汗をいた。うしろから行くマギイ婆さんは何となく嫉妬しっとを感じ始めた。
売春婦リゼット (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「どうしたい。とんだ騒動が持上もちあがったもんだね。」と、忠一はその枕元に坐り込んだ。室内には洋燈らんぷとぼっていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
雪枝ゆきえはハツとせて、いは吸込すひこまれるかと呼吸いきめたが、むね動悸だうきが、持上もちあ揺上ゆりあげ、山谷さんこくこと/″\ふるふをおぼえた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
グリフォンはおどろきのあま前足まへあし兩方りやうはうとも持上もちあげました。『醜飾しうしよくなんていたことがないね!』とさけんで、『おまへ裝飾さうしよくするッてなんことだかつてるだらう、え?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
玄關げんくわんはうかすかおとでもするか、にはこゑでもこえるかすると、ぐにあたま持上もちあげてみゝそばだてる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さうすると、広田先生がむくりときた。くび持上もちあげて、三四郎を見た。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ねえや、こえ、こえ。)といひながら、だるさうに持上もちあげて蓬々ばう/\へた天窓あたまでた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
玄関げんかんほうかすかおとでもするか、にわこえでもこえるかすると、ぐにあたま持上もちあげてみみそばだてる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)