拔目ぬけめ)” の例文
新字:抜目
のべ長助お光の兩人は是で此方こなた拔目ぬけめはないと小躍こをどりをして立戻り長助はたゞちに訴訟書をぞしたゝめけるすべて公事は訴状面によつ善惡ぜんあく邪正じやしやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
鐘のやうに堅牢な體質——病氣も決して彼女に近づかない。几帳面きちやうめん拔目ぬけめない管理者で、家族も小作人も完全に制御されてゐた。
何事も此の老婆ばゞに任せ給へ、又しても心元こゝろもとなげに見え給ふことの恨めしや、今こそ枯技かれえだに雪のみ積れども、鶯鳴かせし昔もありし老婆、よろづ拔目ぬけめのあるべきや
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
で、そこはまた拔目ぬけめのない所謂いはゆる政商せいしやうなどは莫大ばくだいもないかねけてちやう卓子たくしかこむ。そして、わざとける。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かれこのばんかぎつて、ベルをらしていそがしさうにまへつたりたりする電車でんしや利用りようするかんがへおこらなかつた。目的もくてきつてみちひとともに、拔目ぬけめなくあしはこばすことわすれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「あゝ、なか/\拔目ぬけめのないお方だ。さう、まあ聞いたかも知れん。實を云ふと、私はあの中に一人知り合ひがある——プウル夫人と——」
たつしける萬事利發りはつ取廻とりまはしゆゑ重役衆ぢうやくしうには其樣にはからひ下役人へは賄賂わいろおく萬事ばんじ拔目ぬけめなきゆゑ上下こぞつて吉兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きかすぐおのれが隣家の女房を頼み賣物うりものには花をかざれとやら何分宜敷御頼み申すと髮形かみかたちから化粧迄けしやうまで其頃の風俗につくり立損料そんれう着物ぎものを借請衣裳附いしやうつけまで長庵が拔目ぬけめなく差※をなしお文を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
狂人は拔目ぬけめがなく惡意があつて自分の見張りが時々氣をゆるめるときに乘ずることを見逃しはしない——一度は自分の兄を刺したナイフをかくし、二度迄自分の部屋の鍵を手に入れて