悪漢わるもの)” の例文
そうすると、あの悪漢わるものめ、顎鬚をなでてニヤニヤしてやがるんだ。おれはクヴシンニコフと一緒に、毎日あいつの店で朝飯を食ったもんさ。
飛び込んで無茶苦茶に安田一角を打据うちすえました、これを見た悪漢わるものどもは「それ先生が」と駈出して来ましたが側へ進みません、花車はかたえを見向き
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あるいは悪漢わるものに誘拐せられたり、親兄弟のために売られたりしたもの等、その起原にはいろいろありましょうが、いずれも奴隷の身分にいるもので
これも交際つきあい仕方もない。とはいえ俺は手を出さない。屋敷を貸しているばかりさ。だからよ、何も、この俺をだ、悪漢わるものあつかいにしないがいい。だが
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おお、可哀相にさぞ吃驚びっくりしたろう、すんでのことで悪漢わるもの誘拐かどわかそうとした。もういわい、泣くな泣くな。とせな掻撫かいなでていたわれば、得三もほっと呼吸いき
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして、キリスト教と邪教とをひとしく心に刻するのは正しい議論である、なぜなれば、キリスト教をいつわりよそおったユダは悪漢わるものであったと彼は論じた。
賭博とばく現行犯で長野へ引かれ、一年ほどまた臭い飯を食ふ事になつたが、二度目に帰つて来た時は、もう村でも何うする事も出来ない程の悪漢わるものに成りすまして
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
自動車が家の前へ止ったから、誰が来たのかと心配していたのよ。貴郎で本統によかったわ。私は悪漢わるもののためにパーク旅館の五階に監禁されていたのです。それを
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
ダージリンにダンリーワ即ち山駕籠舁やまかごかきが居りますが、もとこの人はその人足廻にんそくまわしで人をあざむいたりあるいはおびやかしたりして金をむさぼることをほとんど常職にして居った悪漢わるもの
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
運転手は女を車へ乗せて女を追っている悪漢わるものの手から救おうとした。運転手は怒鳴どなった。
焦土に残る怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
枕元の鉄網行燈かなあみあんどんの灯影にほかならないあの女、道案内の礼事やら、悪漢わるものに襲われて倒れたところを折よく良人おっとが来合せてこの家へ助け入れた仔細いきさつをくり返しくり返し語り続ける。
実に怪しい物すごい光景で、もし人にこれを見せたらば、確かに神に仕うる僧侶とは思われず、何かけがれたる悪漢わるものか、屍衣しい盗人ぬすびとと、思い違えられたであろうと察せられました。
「だって、おとなりの二郎じろうさんが、悪漢わるものになるとき、いるんだっていったんですもの」
クリスマスの贈物 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
マンマとその宝物ほうもつ正味しょうみぬすとって私の物にしたのは、悪漢わるものが宝蔵に忍びいったようだ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それはどんなことかと申しますと、ちょうど、お父さんがなくなって二月経つか経たぬうちに、この村の鬼門に当る山に、どこからともなく、五人の悪漢わるものが引き移って来たのでした。
狂女と犬 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
夫にしても世の中は不思議なものだ、虫の好かない奴が親切で、気の合つた友達が悪漢わるものだなんて、人を馬鹿にして居る。大方田舎だから万事東京のさかに行くんだらう。物騒な所だ。
坊っちやん (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「なあに、この山羊は、売れない。誰にだって、売れないさ。わしの息子だものな。わしの売物は酒じゃよ。だが道中で悪漢わるものおどされて、酒は呑まれてしもうたから、瓶は二つとも空っぽじゃ。何もない。はははは」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひじやうな悪漢わるものにもみえようが
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
とブツ/\いいながら道恩和尚の手を引いて段々山を下り、影が見えなくなると樹立こだちの間から二人の悪漢わるものが出て参り
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……関係つながりがあるのではあるまいかな? ……いよいよ此奴こやつは逃がせねえ。うむそうだ踏み込んでやろう。有名なうて悪漢わるものであろうとも、たかの知れた盗賊だ。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これは、怪しからん。ふとすると先刻さっき遁失にげうせた悪漢わるもの小戻こもどりして、奪い取ったかも知れぬ、猶予する処でない。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それにしても世の中は不思議なものだ、虫の好かない奴が親切で、気のあった友達が悪漢わるものだなんて、人を馬鹿ばかにしている。大方田舎いなかだから万事東京のさかに行くんだろう。物騒ぶっそうな所だ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「虎ではありません、悪漢わるものの手にかかったものであります」
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「で、一体、その悪漢わるものは何者だね、村の者かね」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
多「冗談いっちゃアいけねえ、あの林のとこ悪漢わるものが隠れているかも知れねえから、おめえさん先へ往ってくんねえ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「それはまアお気の毒な。いえいえ妾がこうやって一度お助けしたからは、例え悪漢わるものが追って来ようと渡すものではござんせぬ。それはご安心なさりませ」
赤格子九郎右衛門の娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「三国峠の権の悪漢わるものだってこと、誰だって知ってるわ。でも、その権、ご領主様に捕えられたじゃアないの」
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その立派さが不逞の女——園原雪枝と申す女は、支那人季参のめかけでもあり悪事の相棒でもあったそうですが——その悪漢わるものの女の心をさえ感化させたほどでございます。
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
横領しようとする。後継者の娘が邪魔になる。悪漢わるものに云いつけてお三保という娘を
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)