寝込ねこ)” の例文
旧字:寢込
随分死の苦しみをしたであろうに、家の者はぐっすり寝込ねこんでちっとも知らなかった。昨秋以来鼬のなんにかゝることこゝに五たびだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
後から考えて見たら、汽車の動いてる最中に寝込ねこんだもんだから、汽車の留ったために、眠りが調子を失ってどこかへ飛んで行ったのである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから幾年いくねんかたちました。むすめもだんだん大きくなりました。ちょうど十五になったとき、おかあさんはふと病気びょうきになって、どっと寝込ねこんでしまいました。
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
もちろん夜分になっては火など焚いて面倒が起ってはならんから焚くことも出来ませず、そこへ寝込ねこんだです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「ランプを枕元まくらもとにつけておいて、つい寝込ねこんでしまうと危いから」とも忠告した。その母親も寝てしまって、父親のいびきに交って、かすかな呼吸いきがスウスウ聞こえる。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
お酒を飲み、御馳走をたくさん食べたあとでは、だれでもすぐにぐっすりと寝込ねこむものです。ことに外は寒く、寝床ねどこの中だけぽかぽかとあたたかい時はなおさらのことです。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
官をして護衛警察官が退却たいきゃくし、のびのびと手足をのばして好い気になっていたとたん、二月二十六日の朝、雪降る中にトラックに乗った警察官の一群が寝込ねこみをついてやって来た。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
けれども半日ほど泣いたら、二晩も眠らなかったつかれが、一ぺんにどっと出て来たのでつい泣きながら寝込ねこんでしまう。そのねむりの中でも豚は、何べんも何べんもおびえ、手足をぶるっと動かした。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あるばん和尚おしょうさんはいつものとおりお居間いまちゃがまをかざったまま、そのそばでうとうと居眠いねむりをしていました。そのうちほんとうにぐっすり、寝込ねこんでしまいました。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
なかなか大食おおぐいだとみえて、さんざんべたり、んだりして、こんどはおなかがくちくなると、おに二人ふたりとも、ぐうぐうたかいびきをかいて寝込ねこんでしまいました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
するうちつい昼間ひるまつかれが出て、人もいぬねむるともなく、ぐっすり寝込ねこんでしまいました。
忠義な犬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
このひいさんがずんずん大きくそだっていって、ちょうど十三になったとき、おかあさんはあるときふと風邪かぜいたといって寝込ねこんだまま、日にましだんだん様子ようすわるくなりました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そして六にんかたなをぬいて、酒呑童子しゅてんどうじている座敷ざしきにとびこみますと、酒呑童子しゅてんどうじはまるで手足を四方しほうからてつくさりでかたくつながれているように、いくじなく寝込ねこんでいました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
文福ぶんぶくちゃがまもそれなりくたびれて寝込ねこんででもしまったのか、それからは別段べつだん手足てあしえておどすというようなこともなく、このおてら宝物ほうもつになって、今日こんにちまでつたわっているそうです。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)