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大火鉢
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おほひばち
むら
雨を
吹通した
風に、
大火鉢の
貝殼灰——これは
大降のあとの
昨夜の
泊りに、
何となく
寂しかつた——それが
日ざかりにも
寒かつた。
上段づきの
大廣間、
正面一段高い
處に、
疊二疊もあらうと
思ふ、
恰も
炎の
池の
如き
眞鍮の
大火鉢、
炭火の
烈々としたのを
前に
控へて、
唯見る
一個の
大丈夫。
さきに
秋冷相催し、
次第に
朝夕の
寒さと
成り、やがて
暮が
近づくと、
横寺町の
二階に
日が
當つて、
座敷の
明い、
大火鉢の
暖い、
鐵瓶の
湯の
沸つた
時を
見計らつて、お
弟子たちが
順々
大火鉢に
火がくわん/\と
熾つて、
鐵瓶が、いゝ
心持にフツ/\と
湯氣を
立てて
居る。
銅壺には
銚子が
並んで、
中には
泳ぐのがある。
老鋪の
旦那、
新店の
若主人、
番頭どん、
小僧たちも。