はた)” の例文
「馬道の三五郎親分のところにいましたよ。すっからかんにはたいて、夜が明けてから這々ほうほうの体で帰ったのを皆んな知っていまさア」
信斎は自分の学問の底をはたいて、色々利益ためになりさうな名句を拾ひ集めては比べてみたりした。そしてやつと出来上つたのが、ひらの蓋に
「さうでさ、ぽどりあんすがね、ありや鬼怒川きぬがはのみはたくつてつてそれつりにつちやつたのせ」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼女は復讐ふくしゅうの小気味よさを感じながらこれ等の覆いものをことごとぎ取った。子供の眼鼻にちりの入らぬよう手拭てぬぐいかぶせといて座敷の中をざっとはたいたり掃いたりした。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
即ち僕の願はどうにかしてこの霜をはたき落さんことであります。どうにかしてこの古び果てた習慣カストムの圧力からがれて、驚異の念を以てこの宇宙に俯仰介立ふぎょうかいりつしたいのです。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
父は吸殻すいがらを手ではたきながら「二郎がきっと何とか聞くだろうと思った。二郎面白いだろう。世間にはずいぶんいろいろな人があるもんだよ」と云って自分を見た。自分はただ「へえ」と答えた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
慶作は出直さうと思つて、逡巡もぢ/\してゐると、寝鎮まつた筈の家の中から、ぱた/\物をはたく音がして折々何か掛声でもするらしい容子ようすがある。
盲目めくら有繋まさかふくろだから畸形かたわつちや他人ひととこなんぞよりやえゝとおもつたんでがせうね、さうしたらお内儀かみさん盲目めくらぜにはたいつちやつたらまた打棄うつちやつて、いてちやでえはなしなのせ本當ほんたう
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
のあたり帝劇で聴き、そのブランスウィックや、コロムビアのライト・ブルーのレコードを、財布をはたいて買った者にとっては、いともなつかしき古典であることも言い添えなければなるまい。
「どうした、蛙奴けえるめねえか、ぼうでばた/″\とはたいてやれ、さうしたらいてえようつて蛙奴けえるめくべえな、くなけえるだよう、よきはかねえようつてなあ」おつぎは與吉よきちいたまゝ勘次かんじほう
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)