うく)” の例文
倶不戴天ぐふたいてんの親のあだ、たまさか見付けて討たんとせしに、その仇は取り逃がし、あまつさへその身は僅少わずかの罪に縛められて邪見のしもとうくる悲しさ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
はずみに乗せられて貫一は思はずうくるとひとし盈々なみなみそそがれて、下にも置れず一口附くるを見たる満枝が歓喜よろこび
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
南岳おもむろに鄰席を顧て曰く諸君驚くことなかれ、我狂するにあらず。唯平生川端玉章の為人を好まず、従つてその手に触れしもの我これをうくることを欲せざるのみと。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
世の慾を捨てし我らなればその芳志こころざしうくるのみ、美味と麁食とをえらばず、わずかに身をば支ふれば足れりといふにぞ、便すなわち稗の麨を布施しけるに、僧は稗の麨を食しおわりてさりたりける。
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
到底とてもこれに相續そうぞく石油藏せきゆぐられるやうなもの身代しんだいけふりとりてのこ我等われらなにとせん、あとの兄弟けうだい不憫ふびん母親はゝおやちゝ讒言ざんげん絶間たえまなく、さりとて此放蕩子これ養子やうしにと申うくひと此世このよにはあるまじ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けだし慶応義塾の社員は中津の旧藩士族にいずる者多しといえども、従来少しもその藩政にくちばしを入れず、旧藩地に何等なんらの事変あるもてんとして呉越ごえつかんをなしたる者なれば、往々おうおうあやまっ薄情はくじょうそしりうくるも
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
されどもこはふべからざる事情の下に連帯のいんせしが、かたの如く腐れ込みて、義理の余毒の苦をうくると知りて、彼の不幸を悲むものは、交際官試補なる法学士蒲田かまだ鉄弥と
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
到底とてもこれに相続は石油蔵へ火を入れるやうな物、身代けふりと成りて消え残る我等何とせん、あとの兄弟も不憫ふびんと母親、父に讒言ざんげんの絶間なく、さりとて此放蕩子これを養子にと申うくる人この世にはあるまじ
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)