取囲とりかこ)” の例文
旧字:取圍
彼山々こそ北海道中心の大無人境を墻壁しょうへきの如く取囲とりかこむ山々である。関翁の心は彼の山々の中にあるのだ。余は窓にって久しく其方を眺めた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なよたけ、老爺ろうやの背後を通って、左手の小路へ出る。わらべ達は嬉しそうになよたけのまわりを取囲とりかこむ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
其れを取囲とりかこんだ一町四方もある広い敷地は、桑畑や大根畑に成つて居て、出入でいりの百姓が折々をり/\植附うゑつけ草取くさとりに来るが、てらの入口の、昔は大門だいもんがあつたと云ふ、いしずゑの残つて居るあたりから
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
大なる高塀たかべいで厳重に取囲とりかこまれてあるから、敵が攻めて来ても籠城ろうじょうして居るにはごく都合がよく出来て居るに拘わらず、そのうちに水の出る所のないというのは実に奇態きたいな訳です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
彼を取囲とりかこむ立木の一本一本が、彼をジイッと見守っているように思われて来る。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
他目はためからは、どうても医者いしゃ見舞みまいとしかおもわれなかった駕籠かご周囲まわりは、いつのにやら五にんにん男女だんじょで、百万遍まんべんのように取囲とりかこんで、えばほど、そのかずしてるばかりであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
敦賀つるが悚毛おぞけつほどわづらはしいのは宿引やどひき悪弊あくへいで、其日そのひしたるごとく、汽車きしやりると停車場ステーシヨン出口でぐちから町端まちはなへかけてまねきの提灯ちやうちん印傘しるしかさつゝみきづき、潜抜くゞりぬけるすきもあらなく旅人たびびと取囲とりかこんで
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
他の多くはそれら峻峰しゅんぽう取囲とりかこんだ高低様々の山々である。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
八方から取囲とりかこんで、なますになれと斬ってかかるのを
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)