南京虫なんきんむし)” の例文
旧字:南京蟲
今ごろは、あいつも袋だたきにされてるはずだから、お前たちをやっつけるぐれえ南京虫なんきんむしつぶすようなもんさ、へっへっへ……
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
けた玉菜たまなや、ランプのいぶりや、南京虫なんきんむしや、アンモニヤのにおいこんじて、はいったはじめの一分時ぷんじは、動物園どうぶつえんにでもったかのような感覚かんかく惹起ひきおこすので。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
彼は直ちに、水夫二人ふたりにかつがれて、最も震動と、轟音ごうおんのはなはだしい船首の、彼の南京虫なんきんむしだらけの巣へ連れ込まれた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
曽根は警察の留置所でくわれた南京虫なんきんむしのあとが、赤くはれ上り気持が悪くてしようがないので、社へ出る前にちょっと医者へ行って薬をつけてもらった。
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
私がこの店に入ったのは夏であったが、南京虫なんきんむし跳梁ちょうりょうしていて安眠できなかった。皆んな店の間や物干場に寝たりしていた。私は入店に際しパンツと地下足袋を買った。
安い頭 (新字新仮名) / 小山清(著)
彼女は失踪した夫のことだの、売り払ってしまったダブル・ベッドのことだの、南京虫なんきんむしのことだのを考えつづけた。すると誰かためらい勝ちに社宅の玄関のベルを押した。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「昨今急に出ましたね。私のところはバラックだから南京虫なんきんむしもいるようです」
朝起の人達 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
うたた脾肉ひにくたんに耐えないのであったが、これも身から出たさびと思えば、落魄らくはくの身の誰を怨まん者もなく、南京虫なんきんむししらみに悩まされ、濁酒と唐辛子をめずりながら、温突おんどるから温突へと放浪した。
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「しかし汚ないですよ、南京虫なんきんむしがいますよ、あなた、辛抱しんぼうができますか」
水夫がその南京虫なんきんむしの待ちくたびれている巣へもぐり込んだのは、午前一時前十五分であった。そこには眠りが眠った。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
まだねむらないで南京虫なんきんむしたたかっているものもあろう、あるいつよ繃帯ほうたいめられてなやんでうなっているものもあろう、また患者等かんじゃら看護婦かんごふ相手あいて骨牌遊かるたあそびをしているものもあろう
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ただまるまるふとったほおにいつも微笑びしょうを浮かべている。奉天ほうてんから北京ペキンへ来る途中、寝台車の南京虫なんきんむしされた時のほかはいつも微笑を浮かべている。しかももう今は南京虫に二度とされる心配はない。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
患者等かんじゃら油虫あぶらむし南京虫なんきんむしねずみやからてられて、んでいることも出来できぬと苦情くじょうう。器械きかいや、道具どうぐなどはなにもなく外科用げかよう刄物はものが二つあるだけで体温器たいおんきすらいのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「恐ろしい資本家もあったものだ! ハッハッハハハハハ、のみ南京虫なんきんむしのだろう!」
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)