半合羽はんがっぱ)” の例文
出し半合羽はんがっぱ日和下駄ひよりげたにて浅草山あさくさやま宿辺しゅくへん住居すまいより木挽町楽屋へ通ひ衣裳かつら大小だいしょうの道具帳を書きまた番附表看板とうの下絵を綺麗に書く。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
と云うから小僧が戸を明けると這入って来た男は、半合羽はんがっぱに千草の股引に草鞋がけで、一本お太刀たちを差して、手には小包を提げたまゝ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
竹の笠と、半合羽はんがっぱと、カルサンと、藁沓わらぐつといったようなものが、取揃えられてあるのを見ると、あれをお借りしようという気になりました。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
黒の半合羽はんがっぱを着たまま奥の方に腰掛け、ぜんを前にして、供の男を相手にしきりにはしを動かしている客もある。その人が中津川の景蔵だった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
薬研堀やげんぼり不動様ふどうさまへ、心願しんがんがあってのかえりがけ、くろじょうえりのかかったお納戸茶なんどちゃ半合羽はんがっぱ奴蛇やっこじゃそうろうごのみにして、中小僧ちゅうこぞう市松いちまつともにつれた、紙問屋かみどんや橘屋たちばなや若旦那わかだんな徳太郎とくたろう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
鉄無地の道行みちゆき半合羽はんがっぱ青羅紗あおらしゃ柄袋つかぶくろ浅黄あさぎ甲斐絹かいき手甲脚半てっこうきゃはん霰小紋あられこもん初袷はつあわせを裾短かに着て、袴は穿かず、鉄扇を手に持つばかり。斯うすると竜次郎の男振りは、一入ひとしお目立って光るのであった。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
物干の間からのぞいて見ると紺の股引ももひき唐桟縞とうざんじま双子ふたこの尻を端折り、上に鉄無地てつむじ半合羽はんがっぱを着て帽子もかぶらぬ四十年輩の薄い痘痕あばたの男である。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
側にいた年齢としごろ廿二三で半合羽はんがっぱを着ている商人体あきんどていの男が、草鞋のよごれたのを穿いて頬冠ほうかむりをしながら、此の男も出に掛りますと、突然いきなり傍にあった角右衞門の風呂敷包を引攫ひっさらってげましたから
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
すげの深い三度笠をかぶりまして、半合羽はんがっぱ柄袋つかぶくろのかゝった大小をたいし、脚半甲きゃはんこうがけ草鞋穿わらじばきで、いかにも旅馴れて居りまする扮装いでたち行李こうりを肩にかけ急いで松倉町から、う細い横町へ曲りに掛ると
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)