-
トップ
>
-
鉄無地
物干の間から
覗いて見ると紺の
股引に
唐桟縞の
双子の尻を端折り、上に
鉄無地の
半合羽を着て帽子も
冠らぬ四十年輩の薄い
痘痕の男である。
人の悪い
中洲の大将などは、
鉄無地の羽織に、茶のきんとうしの
御召揃いか何かですましている
六金さんをつかまえて、「どうです、一枚脱いじゃあ。
黒油が流れますぜ。」
(現に須永は母の御供をしてこういう
旧弊な
真似を当り前のごとくやっている。)それから
鉄無地の羽織でも着ながら、歌舞伎を
当世に
崩して往来へ流した
匂のする町内を
恍惚と歩きたかった。