割拠かっきょ)” の例文
旧字:割據
ひとり毛利家ばかりでなく、総じて戦国初頭から群雄割拠かっきょしはじめた各地の豪雄英傑のあいだには、私業のみあって世業はなかった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又その何々株式会社とある建物の一室に何とか理髪店というのが割拠かっきょしている。又「何とか食堂、グリルルーム」というのがある。
丸の内 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
我が国中古は封建時代と称し、各地に大名が割拠かっきょしていた。その大名には騎士ナイトと称する仁義兼備の若武者が、武芸を誇って仕えていた。
地方に割拠かっきょした連衆れんじゅの群は小さかったけれども、彼らの間だけではその一人の感じたことが、いつのまにか他の朋輩の修養にもなっていた。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
が、とにかく、三万頭の膃肭獣により成る数千百のハーレムにおける割拠かっきょ、争奪、保護、飛血、生殖、哺乳の大歓楽境大修羅場だいしゅらじょうを現出する。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
それに机が並んで、各部が割拠かっきょしている。社会部は経済部の隣りだった。堀尾君は二十名ばかりの同僚に引き合せて貰った。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その文明にはあるいは藤原時代になかった伝播力が具わっているにもせよ、群雄は各地に割拠かっきょし盗賊は所在に横行し、旅行の安全を害しつつあったではないか。
我日本に於いては、封建割拠かっきょの制度からも、自然と地方地方の人の間に隔壁を生じ、互に妙な感情を持つに至った。近頃は大分に矯正されたけれども、なお大分残っている。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
元来旅順ほど小山が四方よも割拠かっきょして、禿頭を炎天にさらっている所はない。が乏しい土質どしつへ、遠慮のない強雨ごううがどっと突き通ると、傾斜の多い山路の側面が、すぐ往来へくずれ出す。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
畿内きだいに於けるこの対立ほど明確ではなかったにしても、地方に於ける豪族は各〻土地を私有して、独立した支配者として割拠かっきょしており、天皇家の日本支配は必ずしも甘受かんじゅせられていなかった。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「絶対に敵対出来ぬという、威大の什器じゅうきが造られましたならば、四方に割拠かっきょする武将達も到底及ばぬ事を知って、自ら兵を収めます筈」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
十数年の間、雪が解けると始まった川中島の合戦は、越後人と甲州人との喧嘩だったが、両方ともまず山岳割拠かっきょの武族だった。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この日本の紳士のような一団の人物が割拠かっきょして、『万葉集』に近い日本語でも話しつつ、久しぶりの再会を待っているかのごとく夢みることは、私などから見れば
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
道はなるべくけんにし、河は必要のほかこれにけず、どこにも彼処かしこにも関所をおいて、深く守っているのが、国々、群雄ぐんゆう割拠かっきょすがただった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この一語の成立は島の統一以前、三山割拠かっきょよりもさらに前の頃にあったかと思われ、個々の邑里ゆうり按司あじぬしまでを、テダとたたえていた例が「おもろ」の中には見出される。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
越後えちごには上杉、群雄四方に割拠かっきょしてを争う物凄ものすごさ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
けれど、時代の推進を複雑にしているものには、院、武門、旧勢力の公卿などのほかに、叡山や奈良に割拠かっきょする武装僧団という厄介なものがある。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
果てしない国内の騒乱と、群雄ぐんゆう割拠かっきょは、果てしない民衆の塗炭とたんである。万民の苦しみは、一天の大君の御悩おんなやみであることはまたいうまでもない。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いま割拠かっきょする諸国の群雄にとって、血まなこ、血みどろな、第一の関心は、その領土である。寸土尺地にもしのぎを削りあって他事もない有様の折である。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宇内うだいいたる所の国々に割拠かっきょする大名豪傑のともがらが、みな理想としていることではあったが、単身、京都へのぼって、将来の計をなそうとするような——そんな身軽な豪胆さは
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
各地に割拠かっきょする豪族たちから、遅々ちち、自覚されて、東海に徳川、織田のつあり、西海に、毛利、大内の起るあり、甲山に信玄、ここに謙信、相模に北条、そして駿遠の堺に
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
応仁の乱麻らんまから、割拠かっきょしていた群雄のおびただしい複数が、徐々に単位に近づき、信長によって、飛躍的にそれがひとつに達しようとしたとき、忽然こつぜんと彼は世を去り、彼の死は加速度に
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幕府の内訌も、もとをただせば、細川、畠山、斯波しば、今川、佐々木といったような功臣が、みな自力で割拠かっきょしうる力を持ってきたからである。若い義詮がこれをおさめるのは容易でない。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)