出任でまか)” の例文
けれども其真面目まじめは、単に動機どうき真面目まじめで、くちにした言葉は矢張好加減いゝかげん出任でまかせに過ぎなかつた。厳酷に云へば、嘘許うそばかりと云つてもかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おそらくくちから出任でまかせに、たいして苦勞くろうなしにつくつたとおもはれますが、それがみな下品げひんでなく、あっさりとほがらかにあかるい氣持きもちでげられてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
母がぱっぱという出任でまかせのわが子に対しても見境いない憎悪の言葉を耳にとがめて、反射的にたしなめるそのことが一時の忠義立てや侠気きょうきす業にしても
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
肉の塊のように焼け爛れた死顔をしばらくみつめていた藤吉は、やにわに死人の袖を二の腕まで捲くり上げながら、背後の幇間を顧みて口から出任でまかせに言った。
わしは気が短いもんですから、突然いきなり出任でまかせに云いますので……えゝお繼お前何ういう訳で巡礼に出るのだえ、十二の時から御厄介になって十六まで和尚様が御丹誠なすって
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なしけるにいやさ其方そなた仕合しあはせ者よききやくが有るといふうはさとくより知て居る尾張屋の客はどうした此の頃は御出がないかして半四郎近江あふみから御出の人はと口から出任でまかせに引手茶屋の名前を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
子供の泣き真似や、また出任でまかせの歌などがひどく彼女を喜ばせました。そうして初めはそんな鳥などを買った事に不平をこぼしたくせに、もうそんな事はすっかり忘れてしまったらしいのです。
オカアサン (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
出任でまかせに即興的に弾きはじめた。
道化者 (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
神楽坂かぐらざかりて、あてもなく、いた第一の電車につた。車掌に行先ゆくさきを問はれたとき、くちから出任でまかせの返事をした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
口から出任でまかせ永々と物語り何卒御宅の御首尾しゆび御繕おつくろひ有て能程よきほどに御尋ねつかはされなば私し迄も忝けなしと云ひつゝ小夜衣よりあづかりたる文を差出しけるにぞ千太郎はとるおそしと押披おしひらき一くだよんでは笑を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すべて吾輩のかく事は、口から出任でまかせのいい加減と思う読者もあるかも知れないが決してそんな軽率な猫ではない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
口から出任でまかせにあざむすゝめ四里八町の道を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
だから、其注文を曖昧にはづす事にれてゐた。けれども、斯う云ふ大質問になると、さうくちから出任でまかせに答へられない。無暗な事を云へば、すぐちゝおこらして仕舞ふからである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もし女がいなかったならば肉の上に取り残されたこの異様な一点を確かめるために、彼はつかつかと男の前へ進んで行って、何でも好いから、ただ口から出任でまかせの質問をかけたかも知れない。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と相変らず口から出任でまかせに喋舌しゃべり立てる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)