來懸きかゝ)” の例文
新字:来懸
此處こゝ筒袖つゝそで片手かたてゆつたりとふところに、左手ゆんで山牛蒡やまごばうひつさげて、頬被ほゝかぶりしたる六十ばかりの親仁おやぢ、ぶらりと來懸きかゝるにみちふことよろしくあり。
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
出行いでゆきたり元より足も達者にて一日に四十里づつ歩行あるくめづらしき若者なれば程なく松の尾といふ宿迄しゆくまで來懸きかゝりしに最早とく日は暮て戌刻頃いつゝごろとも思ひしゆゑ夜道を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
請取うけとりそれより呉服橋へ掛り四日市へと來懸きかゝるに當時そのころは今とちがひ晝も四日市へんさびしく人通ひととほまれなれば清三郎は惡僕わるもの二人ふたりと共に此處に待伏まちぶせなし居たり又七は金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一軒いつけん煮染屋にしめやまへちて、買物かひものをして中年増ちうどしま大丸髷おほまるまげかみあまたんだる腕車くるまして、小僧こぞう三人さんにんむかうより來懸きかゝりしが、私語しごしていはく、ねえ、年明ねんあけだと。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
忽ち其所へ打倒うちたふめつなぐりに打据うちすゑたり斯る所へ半四郎は彼早足かのはやあしも一そうはげしく堤の彼方へ來懸きかゝりて遙か向うを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
旦那だんな相乘あひのりまゐりませう、とをりよく來懸きかゝつた二人乘ににんのりふやうにして二人ふたり乘込のりこみ、淺草あさくさまでいそいでくんな。やす料理屋れうりや縁起えんぎなほしに一杯いつぱいむ。此處こゝ電燈でんとうがついて夕飯ゆふめししたゝめ、やゝ人心地ひとごこちになる。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)