何樣なにさま)” の例文
新字:何様
たすたき一心に理も非もなく只々一生懸命に申立けるにぞ越州殿ゑつしうどのには何樣なにさま愍然びんぜんとは思はるれども故意わざと聲をはげまされて成程親の爲に一命を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
燃える樣な新しい煉瓦の色の、廓然くつきりと正しい輪廓を描いてるのは、何樣なにさま木造の多い此町では、多少の威嚴をたもつて見えた。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
けれども、茶店ちやみせばあさんはしやうのものです。げんに、わたしとほがかりにぬまみぎはほこらをさして、(あれは何樣なにさまやしろでせう。)とたづねたときに、(さい神樣かみさまだ。)とつてをしへたものです。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やっとのことで、門閥家もんばつかの、領地有りゃうちもちの、としわかい、教育けういく立派りっぱな、何樣なにさま才徳さいとく具足ぐそくしたをとこうもありたいもの、とのぞまるゝとほりに出來上できあがってゐる婿むこさがして、供給あてがへば、ともない
はなし是は是非々々ぜひ/\うつたへねばならぬと急込せきこむを長兵衞先々まづ/\とて樣子をとくきゝ何樣なにさまこれは外より入たる盜人ぬすびとにては有まじ然れどもいまこれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
初つて逢つた時は前科者ぢやないかと思つたと主筆の云つた如く、何樣なにさま物凄く不氣味に見える。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひとへに御頼み申なりと言ければすけ十郎は合點うなづき何樣なにさま御尤も至極なれば早々郷右衞門お島ともに申合せ取計ふべけれども御兄弟を救ひ出せし上御二方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何樣なにさま耳新らしい語では有つたが、耳新らしいだけそれだけ、聞き慣れた「油地獄」とか「吉原何人斬」とか言ふものよりも、猶一層上手うはてな、殘酷な舞臺面を持つてゐるらしく思はれた。
所謂今度の事:林中の鳥 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)