今日迄こんにちまで)” の例文
小皿には好物の納豆も附いた。其時丑松は膳に向ひ乍ら、かくも斯うして生きながらへ来た今日迄こんにちまでを不思議に難有ありがたく考へた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
成效せいかう」と宗助そうすけ非常ひじやうえんとほいものであつた。宗助そうすけういふ雜誌ざつしがあるとことさへ、今日迄こんにちまでらなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それを二つとない宝のように、人に後指を差されて迄も愛して呉れたのは、生れて以来今日迄こんにちまで何万人となく人に出会ったけれど、其中そのうちで唯祖母と父母あるばかりだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しかわたくしうまれた其日そのひより今日迄こんにちまでえず苦痛くつうめてゐるのです、其故それゆゑわたくし自分じぶん貴方あなたよりもたかいもの、萬事ばんじおいて、よりおほ精通せいつうしてゐるものとみとめてるです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
三十年後の今日迄こんにちまで依然として其の色を変ぜざるのみか、一度ひとたびやまと新聞に写し植字うえたるに、また時期に粟田口あわだぐち鋭き作意と笛竹ふえたけの響き渡り、あたか船人せんどうの山に登るべき高評なりしを
十三の年から今日迄こんにちまで受けた恩愛は一生忘れまい。何時までも自分は奥様の傍に居て親と呼び子と呼ばれたい心は山々。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
翌日よくじつ代助は但馬にゐる友人から長い手紙を受取つた。此友人は学校を卒業すると、すぐ国へかへつたぎり、今日迄こんにちまでついぞ東京へた事のない男であつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これが私の今日迄こんにちまでの経歴だ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「何をしかられたんだか、あんまり要領を得ない。然し御父おとうさんの国家社会のために尽すには驚ろいた。何でも十八のとしから今日迄こんにちまでのべつにつくしてるんだつてね」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
同族の受けた種々さま/″\の悲しい恥、世にある不道理な習慣、『番太』といふ乞食の階級よりも一層もつと劣等な人種のやうにいやしめられた今日迄こんにちまでの穢多の歴史を繰返した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それでもをつとおとうとだとおもふので、るべくはそりあはせて、すこしでもちかづけるやうに/\と、今日迄こんにちまで仕向しむけてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
去ればこそ今日迄こんにちまで西洋人の作った作物を西洋人が評する場合に、便宜に応じて沢山たくさんな名をつけている。
高浜虚子著『鶏頭』序 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)