人通ひとゞほ)” の例文
りたけとほはなれて、むかがはをおとほんなさい。なんならあらかじ用心ようじんで、ちやううして人通ひとゞほりはなし——かまはず駈出かけだしたらいでせう……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
の上からまつの枝も見える。石灰いしばひの散つた便所の掃除口さうぢぐちも見える。塵芥箱ごみばこならんだところもある。へんに猫がうろ/\してる。人通ひとゞほりは案外にはげしい。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
見るにいつ落せしや九十兩のかね見えざりければ三吉は駭驚仰天びつくりぎやうてんして立歸り猿眼さるまなこに成て能々尋ねけれ共人通ひとゞほり多き所ゆゑ一向に跡形あとかたもなし依て又々元の手ふりとなりければふたゝび本郷の甲州屋へ行仁左衞門に右の事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もういくら待つても人通ひとゞほりはない。長吉ちやうきち詮方せんかたなく疲れた眼をかははうに移した。河面かはづら先刻さつきよりも一体にあかるくなり気味悪きみわるい雲のみねは影もなく消えてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ゆきには、なんにも、そんなやつなかつたんです。もつと大勢おほぜい人通ひとゞほりがありましたからかなかつたかもれません。かへり病院びやうゐん彼方あつちかどを、此方こつちまがると、其奴そいつ姿すがたがぽつねんとしてひとツ。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
子供のむれがめんこや独楽こまの遊びをしてゐるほかには至つて人通ひとゞほりのすくな道端みちばた格子戸先かうしどさきで、張板はりいた張物はりものをしてた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ですから、矢張やつぱ人通ひとゞほりをお待合まちあはせなさるがい。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)