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亭々
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ていてい
ふりがな文庫
“
亭々
(
ていてい
)” の例文
池のなぎさは
微
(
かす
)
かにわかるが、藤棚から藤のつるが思いのまま
伸
(
の
)
び
蔓延
(
はびこ
)
っているし、所々には、
亭々
(
ていてい
)
たる大樹が二重に空を
蔽
(
おお
)
っている。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
近所にも松の木がないわけではないが、しかし皆小さい庭木で、
松籟
(
しょうらい
)
の
爽
(
さわ
)
やかな響きを伝えるような
亭々
(
ていてい
)
たる大樹は、まずないと言ってよい。
松風の音
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
玄竜の幻覚においては、それはポプラの
亭々
(
ていてい
)
として立つ広い並木路のように見える。泥だらけの下水は綺麗に水の澄んだ小川の流れのように思われる。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
舞台の下落ですな、アルカージナさん! 昔は
亭々
(
ていてい
)
たる大木ぞろいだったものだが、今はもう切株ばかしでね。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
鬼は
金棒
(
かなぼう
)
を忘れたなり、「人間が来たぞ」と叫びながら、
亭々
(
ていてい
)
と
聳
(
そび
)
えた
椰子
(
やし
)
の間を
右往左往
(
うおうざおう
)
に逃げ
惑
(
まど
)
った。
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
辻川博士の奇怪な研究室は葉の落ちた
欅
(
けやき
)
の大木にかこまれて、それらの木と高さを争うように、
亭々
(
ていてい
)
として地上三十尺あまりにそびえている支柱の上に乗っていた。
蜘蛛
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
向うの崖に
亭々
(
ていてい
)
と聳える松の枝は、無言でゆれている。黄ばんだ白絹のカーテンはまるで立登るけむりか海草のように、ゆったりと、これまた音もなく朝風と戯れている。
蝱の囁き:――肺病の唄――
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
頂上まで
殆
(
ほとん
)
ど一直線に付けられた
巌石
(
がんせき
)
の道で、西側には
老杉
(
ろうさん
)
亭々
(
ていてい
)
として昼なお暗く、なるほど道の険しい事は数歩
前
(
さき
)
の
巌角
(
いわかど
)
の胸を突かんばかり、胸突き八丁の名も
道理
(
ことわり
)
だ。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
高野山
(
こうやさん
)
に
紛
(
まぎ
)
れこんだのではないかと
駭
(
おどろ
)
くほど、杉や
欅
(
けやき
)
の
老樹
(
ろうじゅ
)
が太い幹を重ねあって
亭々
(
ていてい
)
と
聳
(
そび
)
え、首をあげて天のある方角を仰いでも僅か一メートル四方の空も見えないのだった。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
鉦鼓淵
(
しょうこえん
)
、
盗人
(
ぬすと
)
谷、その天上の風格は
亭々
(
ていてい
)
と
聳立
(
しょうりつ
)
する将軍台、また
厳
(
げん
)
として
平
(
たいら
)
なる
金床台
(
きんしょうだい
)
。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
石の左右に、この松並木の中にも、形の丈の最も
勝
(
すぐ
)
れた松が二株あって、海に寄ったのは
亭々
(
ていてい
)
として雲を
凌
(
しの
)
ぎ、町へ寄ったは
拮蟠
(
きっはん
)
して、枝を低く、
彼処
(
かしこ
)
に
湧出
(
わきい
)
づる清水に
翳
(
かざ
)
す。……
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この村の身上は、何といっても高い数十本の
雌松雄松
(
めまつおまつ
)
である。やがてこれも減って行くことだろうが、今はとにかく
亭々
(
ていてい
)
として茂り栄え、またこの五六年にかなり大きくもなった。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
トラックの上から見る、サイゴンの大通りは、ヨウの大樹の並木が、
亭々
(
ていてい
)
と並んでゐて、その樹下のアスハルトの
滑
(
すべ
)
つこい大通りを、輪タクに似たシクロが昆虫のやうに走つてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
しかし
池畔
(
ちはん
)
からホテルへのドライヴウェーは、
亭々
(
ていてい
)
たる
喬木
(
きょうぼく
)
の林を切開いて近頃出来上がったばかりだそうであるが、樹々も路面もしっとり雨を含んで見るからに冷涼の気が肌に迫る。
雨の上高地
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
亭々
(
ていてい
)
と聳える杉林の上は、何時の間にか、いっぱいの黒雲に
掩
(
おお
)
われてのしかかるように暗く、同じように顔をあげた運転手と眼を見合わせ、
瓢箪
(
ひょうたん
)
のような顔の沢田が、眉をひそめて口を尖らせたが
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
すばらしい杉の古木が、
亭々
(
ていてい
)
と道の両側に並ぶ下を
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ただこの喬木が、
亭々
(
ていてい
)
、次代にそびえ、
爛漫
(
らんまん
)
、この世を君が代の春とのどかにする日があれば——わが願いは足れりといえる。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
松林にも
腕白
(
わんぱく
)
らが騒いでいた。良寛堂の敷地には
亭々
(
ていてい
)
たる赤松の五、六がちょうどその
前廂
(
まえひさし
)
の
斜
(
ななめ
)
に位置して、そのあたりと、日光と影と、
白砂
(
はくさ
)
と
落松葉
(
おちまつば
)
と、
幽寂
(
ゆうじゃく
)
ないい風致を保っていた。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
お城や山内の
樅
(
もみ
)
・
檜
(
ひのき
)
は、
亭々
(
ていてい
)
として千年の緑を
湛
(
たた
)
えているけれども、かつてこの間に静かなる居を構えて、首府の掃除役を一手に引受けていた彼等は、知らぬ間にいずれへか追い払われ
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
幾百年も経たような杉の
梢
(
こずえ
)
が、
亭々
(
ていてい
)
と、宵の空をおおっていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
亭
常用漢字
中学
部首:⼇
9画
々
3画
“亭々”で始まる語句
亭々然
亭々皎々