主家しゅか)” の例文
その秋生国しょうごく遠州えんしゅう浜松在に隠遁いんとんして、半士半農の生活を送ることとなったが、その翌年の正月になって主家しゅか改易かいえきになってしまった。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
主家しゅかの時間だからと思わずに、若い時にせっせと働く習慣くせをつけなければ、一生まめに身体を動かすことのできない人になります。
女中訓 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
是は主家しゅか金森家改易の折、皆々一家中の者が引取ります節に分配しました金子で、それを持ちまして手前共が求めました酒肴でございます
これはとばかりに、若者は真蒼まっさおになって主家しゅか駈込かけこんで来たが、この時すでに娘は、哀れにも息を引取ひきとっていたとの事である。
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
わずかの間もずるけずに何かしていて、主家しゅかの物などは間違ってもちょろまかすような男ではなかった。
吉之丞の父の吉次は松永久秀の家臣で、主家しゅか断絶後だんぜつご、牢人していたのを島津貴久たかひさに見出され、貴久たかひさの言付けで、長崎に船屋敷をおいて海外貿易をはじめるようになったのである。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その殆ど中央に主家しゅかの使いふるしのこわれかかった籐椅子が置いてあるのだ。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何か仔細しさいがなくては、みだり主家しゅかを駈落ちなどする男ではない。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「岐阜へ。ふうむ……。主家しゅかのお使いか」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六郎はじぶんが怪しい女房を刺すとともに、おうぎかなめでもったように主家しゅかの乱脈になったことを考えずにはいられなかった。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
主名は申されません、主家しゅか恥辱はじに相成る事、どのようなお尋ねがあっても主人の名前は申されません、仮令たとい身体が砕けましょうとも、骨が折れましても主名を
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
主家しゅかの方へ戻って来る途中、其処そこは山のすそを廻る道なので右の方が松林で、左が田畝たんぼになっているのであるが、彼はそのみちを一人急いで、娘のことなど考えながらやって来ると
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
我等儀主家しゅか滅亡の後八ヶ年の間同類を集め、豪家又は大寺へ強盗に押入り、数多あまたの金銀を奪い、実に悪いという悪い事はすべて我等が指揮さしずして是迄悪行をかさねしが
心得違いの至りではあるが、拙者若江を連出し、当家へまいって隠れて居りましたなれども、不義淫奔いたずらをして主家しゅか立退たちのくくらいの不埓者ふらちものでは有りますけれども
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
重々恐入った次第で何分にもおゆるしを願います、主家しゅか改易の後、心得違いを致して賊のかしらとなり、二百人からの同類を集めて豪家ごうか大寺おおでらへ押入り、数多あまたの金を奪い、あるい追剥おいはぎを致し
手前主名しゅめいあかし兼ねまするが、胡乱うろん思召おぼしめすなれば主名も申し上げまするが、手前事は元千百五十石を取った天下の旗下はたもとの用人役をした山倉富右衞門のせがれ富五郎と申す者主家しゅか改易になり
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
仮令たといしゅうでも家来でもお家の為を思う者を用いなければ止むを得んから主家しゅかを出る、飢死うえじにしても此の屋敷には居らんと、重役の者と争論いさかいを致しまして家出を致しまして四ヶ年程浪人致して居りました
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
是は拙者の考えで容易に他人ひとに話すべき事ではござらんが、御再考下さるよう……拙者は決して逃隠れはいたしませんが、お互に年来御高恩をこうむった主家しゅかの大事、証拠にもならんような事なれども
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あんな者へ付けては置かれん、酒ゆえに主家しゅかをおいとまに成るような者には添わせて置かんと、無理無体に離縁を取ったが、お行方の事は此の年月としつき忘れた事はありませぬ、そうしてお父様が亡くなっては