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せこ
ふりがな文庫
“
世故
(
せこ
)” の例文
……権門へ頭をさげて通うくらい気のわるい思いはない。やれやれ、さむらいにも、
世辞
(
せじ
)
やら
世故
(
せこ
)
やら、世渡りの
要
(
い
)
る世になったの
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
世故
(
せこ
)
に長けた先生はそれにはわざと答えずに、運動帽を
脱
(
ぬ
)
ぎながら、
五分刈
(
ごぶがり
)
の頭の
埃
(
ほこり
)
を勢よく払い落すと、急に自分たち一同を見渡して
毛利先生
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
平次よりは幾つか年上でせうが、
世故
(
せこ
)
にも
長
(
た
)
け、文筆にも明るい樣子で、この頃の質屋の亭主には、全く珍らしい人柄でした。
銭形平次捕物控:024 平次女難
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そうして自分の骨折から出る結果は、
世故
(
せこ
)
に通じた田口によって、必ず善意に利用されるものとただ
淡泊
(
たんぱく
)
に信じていた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
三十年か四十年世の中に揉まれていれば、大抵の者のなれる「
世故
(
せこ
)
にたけたお悧巧な方」になりたくもありません。私はただ、ほんとの生活がしたい。
地は饒なり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
▼ もっと見る
と
背後
(
うしろ
)
から大きな声で、なかなか調子が好い。
世故
(
せこ
)
に慣れているというまででなくても善良の老人は人に好い感じを持たせる、こういわれて悪い気はしない。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼
自
(
みず
)
から曰く、「格物の天地造化におけるはかえって
易
(
やす
)
く、人情
世故
(
せこ
)
におけるはかえって
難
(
かた
)
し。
吾人
(
ごじん
)
は
須
(
すべか
)
らくその易き所に
狃
(
な
)
れて、その難き所に
倦
(
う
)
むべからず」
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
◎野口君は予より年長でもあり、
世故
(
せこ
)
にも
長
(
た
)
けてゐた。例の隠謀でも、予は
間
(
ま
)
がな
隙
(
すき
)
がな
向不見
(
むかふみず
)
の痛快な事許りやりたがる。野口君は何時でもそれを穏かに制した。
悲しき思出:(野口雨情君の北海道時代)
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
葉子は急に青味を増した顔で細君を見やったが、その顔は
世故
(
せこ
)
に慣れきった三十女のようだった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
何分にも
世故
(
せこ
)
の経験に乏しい長三郎の
頭脳
(
あたま
)
では、その謎を解くべき
端緒
(
たんちょ
)
を見いだし得なかった。
半七捕物帳:69 白蝶怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
世故
(
せこ
)
にもたけ、そうとう機才のある連中ばかりだから、たいていのことならばそれぞれ至当の意見もあるべきところだが、この奇妙な出来事だけは、なんとも
思惟
(
しい
)
の下しようもなく
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
あわれなひとり者の死に様をする為に其温かな
巣
(
す
)
からさまよい出られねばならなかったのでしょうか?
世故
(
せこ
)
を
経尽
(
へつく
)
し人事を知り尽した先生が、何故其老年に際し、
否
(
いや
)
墓に
片脚
(
かたあし
)
下
(
おろ
)
しかけて
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
と
至極
(
しごく
)
ありふれた解釈を、手やすく下してしまった。普通それが早分りのする人情
世故
(
せこ
)
に通じた一般的のものだけに、金持ちや、物分りのいいという
世間
(
せけん
)
学通
(
がくつう
)
の人たちのいう事はこれと一致した。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
世故
(
せこ
)
に
長
(
た
)
けた友人は、そう言って下宿を出て行った。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
世故
(
せこ
)
に
長
(
た
)
けた調子で話し聞かせるのは渡邊君だ。
山陰土産
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
平次よりは幾つか年上でしょうが、
世故
(
せこ
)
にも
長
(
た
)
け、文筆にも明るい様子で、この頃の質屋の亭主には、全く珍しい人柄でした。
銭形平次捕物控:024 平次女難
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
これだけ云った敬太郎は、定めて
世故
(
せこ
)
に
長
(
た
)
けた相手から笑われるか、冷かされる事だろうと考えて田口の顔を見た。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
主人の顔を見つめたりすると、
世故
(
せこ
)
のつらさに馴れている李小二でも、さすがに時々は涙が出る。
仙人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と、彼は
世故
(
せこ
)
に馴れた落着をもって、凄じい顔つきの人々へ水をかけるように云う。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
丈夫
(
じょうぶ
)
づくりの
薄禿
(
うすっぱげ
)
の男ではあるが、その
余念
(
よねん
)
のない顔付はおだやかな波を
額
(
ひたい
)
に
湛
(
たた
)
えて、今は
充分
(
じゅうぶん
)
世故
(
せこ
)
に
長
(
た
)
けた身のもはや何事にも
軽々
(
かろがろ
)
しくは動かされぬというようなありさまを見せている。
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
世故
(
せこ
)
に慣れきって、落ち付き払った中年の婦人が、心の底の動揺に刺激されてたくらみ出すと見える残虐な
譎計
(
わるだくみ
)
は、年若い二人の急所をそろそろとうかがいよって、腸も通れと突き刺してくる。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
世故
(
せこ
)
に
長
(
た
)
けた柴田文内と、若くて腕の出來る吉住
求馬
(
もとめ
)
は、お氣に入りの筆頭で、その日も土佐守の遠乘りのお供をして、呉服橋の上屋敷から、一氣に目白へのし
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
一つには、
濡鼠
(
ぬれねずみ
)
になった老人の姿が、幾分の同情を動かしたからで、また一つには、
世故
(
せこ
)
がこう云う場合に、こっちから口を切る習慣を、いつかつけてしまったからである。
仙人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
どうか御再考を
煩
(
わずら
)
わしたい。
世故
(
せこ
)
にたけた敏腕家にも似合しからぬ事だ。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
世故
(
せこ
)
に
長
(
た
)
けた
柴田文内
(
しばたぶんない
)
と、若くて腕のできる
吉住求馬
(
よしずみもとめ
)
は、お気に入りの筆頭で、その日も土佐守の遠乗りのお供をして、呉服橋の上屋敷から、一気に目白へのし
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
中原安太郎
(
なかはらやすたらう
)
これも中学以来の友だちなり。
諢名
(
あだな
)
は
狸
(
たぬき
)
、されども顔は狸に似ず。性格にも狸と言ふ所なし。西川に
伯仲
(
はくちう
)
する秀才なれども、
世故
(
せこ
)
には西川よりも通ぜるかも知れず。
学校友だち
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
共同経営者の丸茂三郎は、私より十五、六も年上で、相当
世故
(
せこ
)
にも
長
(
た
)
けた男ですが、それでも、香川礼子を引き合せた時は、たった一ぺんで気に入ってしまいました。
新奇談クラブ:04 第四夜 恋の不在証明
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
が、彼はそれらの不忠の侍をも、憐みこそすれ、憎いとは思っていない。人情の
向背
(
こうはい
)
も、
世故
(
せこ
)
の転変も、つぶさに味って来た彼の
眼
(
まなこ
)
から見れば、彼等の変心の多くは、自然すぎるほど自然であった。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
最も善い小説家は「
世故
(
せこ
)
に通じた詩人」である。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“世故”の意味
《名詞》
世間の風俗や習慣、それらに関する雑事。
(出典:Wiktionary)
世
常用漢字
小3
部首:⼀
5画
故
常用漢字
小5
部首:⽁
9画
“世”で始まる語句
世
世界
世間
世話
世帯
世人
世辞
世嗣
世子
世馴