不祥ふしやう)” の例文
わがすむ魚沼郡うをぬまこほりの内にて雪頽なだれため非命ひめいをなしたる事、其村の人のはなしをこゝにしるす。しかれども人の不祥ふしやうなれば人名じんめいつまびらかにせず。
母屋おもやにはいろ/\の不祥ふしやうなことがあつたので、新夫婦の部屋を、離室はなれに定めたのは、主人源吉の心盡しでせう。
古老こらうまゆひそめ、壯者さうしやうでやくし、嗚呼あゝ兒等こら不祥ふしやうなり。めよ、めよ、なんきみ細石さゞれいしことぶかざる!
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
狂暴なる露人の東方政策は明らかにこの吾人に下れる最大の自覚に対する魔軍の妨害、また世界悠久の進運に対する不祥ふしやうの禍根なりとし、吾人と共にかくの如き大自覚を有する者は
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
これをつながんとするにおほいなる旗竿はたざをたふさずしては如何いかんともなしがたし。これをたふさんは不祥ふしやうなりとて、あふいで評議ひやうぎ區々まち/\なり。沈光ちんくわうこれをわらつていはく、仔細しさいなしと。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
○こゝにわが郡中ぐんちゆう山村さんそんに(不祥ふしやうのことなれば地名人名をはぶく)まづしき農夫のうふありけり、老母と妻と十三の女子七ツの男子あり。此農夫性質せいしつ篤実とくじつにしてよく母につかふ。
○こゝにわが郡中ぐんちゆう山村さんそんに(不祥ふしやうのことなれば地名人名をはぶく)まづしき農夫のうふありけり、老母と妻と十三の女子七ツの男子あり。此農夫性質せいしつ篤実とくじつにしてよく母につかふ。
るからに執念の留まれるゆゑにや、常にはせるくわい無きも、後住こうぢうなる旗野の家に吉事きつじあるごとに、啾々しう/\たる婦人をんな泣声なきごゑ、不開室の内に聞えて、不祥ふしやうある時は、さも心地好こゝちよげに笑ひしとかや。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さて当日新婚しんこんありつる家に、神使じんしたるべき人は百姓の内旧家きうか門地のともがら神使をつとむべき家定めあり、その中にて服忌ぶくきはさら也、やもめなるもの、家内に病人あるもの、縁類えんるゐ不祥ふしやうありしもの
乘客じようかく暗愁あんしうとはなし、不祥ふしやう氣遣きづかふにぞありける。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)