不用心ぶようじん)” の例文
「おかしいな。いねえはずァねえんだが。——あかりをつけててるなんざ、どっちにしても不用心ぶようじんだぜ。おいらだよ。まつろうさま御登城ごとじょうだよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
江戸の大城たいじょう炎上のとき幼君を守護して紅葉山もみじやま立退たちのき、周囲に枯草の繁りたるを見て非常の最中不用心ぶようじんなりとて、みずから腰の一刀をぬいてその草を切払きりはら
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
だが、それにしては、何という不用心ぶようじんなことだ。現に僕という泥棒がマンマと忍びいったではないか。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
待んと存ぜしが又々金子不用心ぶようじんゆゑ明後日參りて受取り來らん先は五ヶ年留守のうち村中の世話せわに成りことに百五十兩と云ふ大金をためて來りし事なれば村中を明日あすよんで馳走を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
女ばかりでよる不用心ぶようじんだから銀行の整理のつくまで泊りに来て留守番るすばんをしてくれ、小説が書きたければ自由に書くがいい、図書館へ行くなら弁当を持って行くがいい、午後はを習いに行くがいい。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
突當つきあたりの芥溜ごみためわきに九しやくけんあががまちちて、雨戸あまどはいつも不用心ぶようじんのたてつけ、流石さすがに一ぱうぐちにはあらでやま仕合しやわせは三じやくばかりゑんさきくさぼう/\の空地面あきぢめん、それがはじすこかこつて青紫蘇あをぢそ、ゑぞぎく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
可哀かあいや我故身形みなりかまはず此寒空このさむそらあはせ一ツ寒き樣子は見せねども此頃は苦勞の故か面痩おもやせも見えて一入ひとしほ不便に思ふなり今宵は何方いづかたへ行しにや最早初更しよや近きにもどねば晝は身なり窶然みすぼらしく金の才覺さいかくにも出歩行あるかれぬ故夜に入て才覺に出行しか女の夜道は不用心ぶようじんもし惡者わるもの出會であはぬか提灯ちやうちんは持ち行しか是と云も皆我が身のある故なり生甲斐いきがひもなき身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)