一蹴いっしゅう)” の例文
一蹴いっしゅうし去るべきことをれいしていた程だったし、勝家もきょうここへ来るまでは、家臣と同じ気もちでいたが、評議の席へ臨んでみると
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沼南が大隈おおくま参議と進退をともにし、今の次官よりも重く見られた文部ごん大書記官の栄位を弊履の如く一蹴いっしゅうして野に下り
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
飛び上がろう、それがいい、飛び上がるにしくなしだと、とうとうまた先例によって一蹴いっしゅうを試むる事に決着した。ず帽子をとって小脇にい込む。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで僕は、彼がちかごろ取扱った探偵事件のなかで、特に面白いやつを話して聞かせろとねだったのであるが、帆村はあっさり僕の要求を一蹴いっしゅうした。
暗号数字 (新字新仮名) / 海野十三(著)
子規の一蹴いっしゅうによってこの固有芸術は影を消してしまったのである。しかし歴史的に見ても連俳あっての発句である。
俳諧の本質的概論 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
かくして日本の石油保有量に関する疑問は「日本一蹴いっしゅうすべし」という主張の下にてられたる前記の東洋米化政策を実行すべきウオル街の金権政治家と
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
別々に立たせるのを主張する人もあったが、ぼくは、『厳粛なる自由スタアンリバティ』をとなえ、笑って、その議論を一蹴いっしゅうした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
そうだ! 父は最初の悪魔の突撃を物の見事に一蹴いっしゅうしたのだった。この次ぎの期限までには、半年の余裕がある。その間には、父の親友たる本多男爵も帰って来る。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
かれはこの演説で大いに「新人しんじん」ぶりを見せびらかすつもりであったが、野淵に一蹴いっしゅうされたのでたまらなく羞恥しゅうちを感じた。そうして救いを求むるように光一の方を見やった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
自分の擲弾兵てきだんへいを取って国王となし、諸王朝の顛覆てんぷくを布告し、一蹴いっしゅうしてヨーロッパを変造し、攻め寄せる時には神の剣のつかを執れるかの感を人にいだかしめ、ハンニバル、シーザー
もし日本の文壇にこの小説が現れたら、直ちに通俗小説として一蹴いっしゅうせられるにちがいあるまい。純文学を救うものは純文学ではなく、通俗小説を救うものも、絶対に通俗小説ではない。
純粋小説論 (新字新仮名) / 横光利一(著)
猛然として、追いすがろうとする猪熊いのくまおじを、太郎が再び一蹴いっしゅうして、灰の中に倒した時には、彼女はすでに息を切らせて、枇杷びわの木の下を北へ、こけつまろびつして、走っていた。………
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その存在は非常に古いころから、想像されもし書かれてもいるが、もしこれが余人の口からでたのだったら、即座に一蹴いっしゅうされたにちがいない。いまは、セルカークもあやかしに会ったような顔。
人外魔境:10 地軸二万哩 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
社長や重役は勿論もちろん乗気のりきで、会社の技術者の忠言は「君たちは西洋科学だけに頼っているから駄目だ。理窟を言っている時ではない」と一蹴いっしゅうされてしまう。事実そういう実例も二、三あったのである。
千里眼その他 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
馬糧まぐさの中から出て来たのは、これも宿場の牢人どもで、きょうの布令に、ふだんの懶惰らんだ一蹴いっしゅうして、寒さも睡さも忘れている仲間だった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虎船長は、それこそ猛虎が月にほえるような大きなこえを出して、ノルマンの無礼極ぶれいきわまる命令を一蹴いっしゅうした。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
例によって例の如き司法主任の独断の前に一蹴いっしゅうされ、冷笑されてしまったらしい。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
保吉は溜飲りゅういんを下げながら、物売りをうしろに歩き出した。しかしそこへ買いに来た朝日は、——朝日などはもう吸わずともい。いまいましい物売りを一蹴いっしゅうしたのはハヴァナを吸ったのよりも愉快である。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
断然、野合的和睦を一蹴いっしゅうして欲しいのだ。信雄の単独講和は、徳川家の知ったことではないと、天下に宣言して欲しいのである。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
断罪だんざいの日には「証拠不十分」として裁判官から一蹴いっしゅうされるべき性質のものだった。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しきりと御内書をかわされて、織田のうしろをかば、浅井、朝倉も同時に立つ、叡山、長嶋もともども手伝う、三河の家康ごときは一蹴いっしゅうして
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
拝殿の鰐口わにぐちへまで手を触れかけたが——そのとき彼のどん底からむくむくわいた彼の本質が、その気持を一蹴いっしゅうして、鰐口の鈴を振らずに、また祈りもせずに
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一蹴いっしゅうの下に突破して、ただちに徳川、織田の中軍へ錐揉きりもみ戦法で押し通るつもりであったらしい。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし執権の一蹴いっしゅうに会ったらそれまでだ。すでに鎌倉では、現帝の後醍醐に、御出家をすすめるべきであるとか、いっそ遠流おんるし奉るべしとか、極端な論もあると聞えている。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さもこそ——と、家人は頭領かしらのことばにうなずいて、一蹴いっしゅうすべく意気ごんで駈け戻って行った。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何でそれまでを、孔明とて一蹴いっしゅうできよう。彼はわずかに面をそむけて
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「待て待て。過日来から彼の斡旋あっせん一蹴いっしゅうして来たものが、にわかに夜中、此方からただ使いを立てては、敵も、はて? と不審をさしはさもう。——使いをるには、遣る口上も熟慮せねばなるまい」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一蹴いっしゅうされた形になった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、一蹴いっしゅうして
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)