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ぎんくわ
果敢ない
煙草入の
叺の
中を
懸念するやうに
彼は
數次覗いた。
陰鬱な
狹い
小屋の
中で
覗く
叺の
底は
闇かつた。
僅かに
交つた
小さな
白い
銀貨が
見る
度に
彼の
心に
幾らかの
光を
與へた。
今三
年の
後に
見たしと
廓がへりの
若者は
申き、
大黒屋の
美登利とて
生國は
紀州、
言葉のいさゝか
訛れるも
可愛く、
第一は
切れ
離れよき
氣象を
喜ばぬ
人なし、
子供に
似合ぬ
銀貨入れの
重きも
道理
果せる
哉、
銀貨を
馬に
積んで
居るから、
金慣れた
旦那、
物に
動ぜぬ
番頭、
生意氣盛の
小僧どもまで、ホツと
云つて
目を
驚かして、
天から
降つて
來たやうに、
低頭平身して