馳出はせい)” の例文
きびすかへしてツト馳出はせいづればおたかはしつて無言むごん引止ひきとむるおびはし振拂ふりはらへばとりすがりはなせばまとひつきよしさまおはらだちは御尤ごもつともなれども暫時しばし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
老女は聞きもおわらず、窓の戸を開け放ちたるままにて、桟橋さんばしほとり馳出はせいで、泣く泣く巨勢をたすけて、少女を抱きいれぬ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
三吉は腕を叩きて、「たしかに、請合いました。」「よくせい。」とひらりと召す。梶棒かじぼうを挙げて一町ばかり馳出はせいだせる前面むかいより、駈来かけきたる一頭の犬あり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
からくも忍びてつと退きながら身構みがまへしが、目潰吃めつぶしくらひし一番手のいかりして奮進しきたるを見るより今はあやふしと鞄の中なる小刀こがたなかいさぐりつつ馳出はせいづるを、たやすく肉薄せる二人がしもとは雨の如く、所嫌ところきらはぬ滅多打めつたうち
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「お村殿には御用人何某と人目を忍ばれさふらふ」とあざむきければ、短慮無謀の平素ひごろを、酒に弥暴いやあらく、怒気烈火のごとく心頭に発して、岸破がば蹶起はねおき、枕刀まくらがたな押取おつとりて、一文字に馳出はせい
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
六郎が祖父は隠居所いんきょじょにありしが、馳出はせいでて門のあきたるを見て、外なる狼藉者ろうぜきものを入れじと、門をとざさんとせしが、白刃振りてせまられ、いきおいてきしがたしとやおもいけん、また隠居所に入りぬ。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
と血声を揚ぐるに、何事ならんと二三人靴音高く馳出はせいでつ、このていを見て、それと組附く。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)