トップ
>
饗応
>
もてなし
ふりがな文庫
“
饗応
(
もてなし
)” の例文
旧字:
饗應
「放浪の旅の者で御座います、一飯の喜捨と一夜の
饗応
(
もてなし
)
にあづかりたい——」哀れげに声を落して斯う申し出るつもりであつた。
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
不昧公が着いたのは、欠伸が
中
(
ちゆう
)
つ
腹
(
ぱら
)
と変つてゐた時なので、前々から
擬
(
こら
)
した
饗応
(
もてなし
)
の趣巧も、すつかり台なしになつてゐた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「しかしまアわれらお
互
(
たがい
)
の身に取って今日ほど目出たい日はあるまいて。鶴屋さんが折角のお
饗応
(
もてなし
)
だ。
種員
(
たねかず
)
も
仙果
(
せんか
)
も遠慮なく
頂戴
(
ちょうだい
)
致すがよいぞ。」
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
理
(
ゆえ
)
あるかな、今宵は
館
(
やかた
)
に来客ありとて、
饗応
(
もてなし
)
の支度、
拭掃除
(
ふきそうじ
)
、あるいは室の装飾に、いずれも忙殺されつつあり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
九月十三
夜
(
や
)
に、渡邊織江は小梅の
御中屋敷
(
おなかやしき
)
にて、お客来がござりまして、お召によって出張いたし、お
饗応
(
もてなし
)
をいたしましたので、余程
夜
(
よ
)
も更けましたが
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
「みなし
児
(
ご
)
たちをお助けくださいまし! なくなったセミョーン・ザハールイチの
饗応
(
もてなし
)
をおぼし召して!……貴族といってもいいくらいの!……ああ!」
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
見れば子供衆が菓子を食べていなさるが、そんな物は腹の足しにはならいで、歯に
障
(
さわ
)
る。わしがところではさしたる
饗応
(
もてなし
)
はせぬが、
芋粥
(
いもがゆ
)
でも進ぜましょう。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
贋
(
に
)
せ侍斬りに就いて大目附へ出頭した紋服姿の石月平馬と、地味な
木綿縞
(
もめんじま
)
に町の低い
役袴
(
やくばかま
)
を穿いた三五屋、佐五郎老人が、帰り道に招かれて夕食の
饗応
(
もてなし
)
を受けていた。
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
かねてこうと大かたは想像して来た
賓客
(
まろうど
)
たちも、予想を裏切らるるばかりの善美の
饗応
(
もてなし
)
には、そのやわらかい
胆
(
きも
)
をひしがれた。あるじは得意であった。客もむろん満足であった。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
せっかくお見えになったのにあいにくなんのお
饗応
(
もてなし
)
もできませんが、その代り、これから
巴里
(
パリー
)
の技芸学校出身のペンギン鳥の曲芸をお目にかけますから、どうか見て行ってちょうだい。
ノンシャラン道中記:08 燕尾服の自殺 ――ブルゴオニュの葡萄祭り――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
婦人の専ら任ずる所に就て
濃
(
こまか
)
に之を視察すれば、衣服飲食の事を始めとして、婢僕の取扱い、音信贈答の注意、来客の接待
饗応
(
もてなし
)
、四時遊楽の趣向、尚お進んで子女の養育、病人の看護等
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
御言
(
みことば
)
を聴きをりしが、マルタ
饗応
(
もてなし
)
のこと多くして心いりみだれ、御許に進みよりて言ふ「主よ、わが姉妹われを一人のこして働かするを、何とも思ひ給はぬか、彼に命じて我を助けしめ給へ」
律子と貞子
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
広間には
饗応
(
もてなし
)
の支度が出来ていた。なにより盛りつぶしである、酔わせて食わせて艶色を与えて金を握らせる、これが監察使に対する不変の礼儀であり、唯一にして欠くべからざる作法である。
三悪人物語:忍術千一夜 第二話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
嫂
(
あによめ
)
が
風邪気
(
かぜけ
)
なので、彼女が代理として
饗応
(
もてなし
)
の席に出たら、Hさんが兄といっしょに旅行する話を始めたと告げた。彼女は喜ばしそうな調子で、自分に礼を述べた。父からも
宜
(
よろ
)
しくとの事であった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これを菜にし、そして釜で煮えた乾米の湯漬けを秀吉主従に勧めるのでした。秀吉は、その簡素で優雅な行き届いた利休の作法にむしろ呆れ果て、ただただ感嘆を続けつつ、
饗応
(
もてなし
)
を受けて帰りました。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
伝二郎がおずおず横ちょに押して出した菓子箱は、その場で主人の手によって心持ちよく封を切られて、すぐさまあべこべに
饗応
(
もてなし
)
の材料に供せられた。浪人らしいその
豁達
(
かったつ
)
さが伝二郎には嬉しかった。
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「もちろん、行って悪いとは云わぬ。また先方としてみればいわばお前は恩人であるから、招いて
饗応
(
もてなし
)
もしたかろう。呼ばれてみれば断わりもならぬ。だから行くのは悪くはないが、どうも少し行き過ぎるようだ」
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
山本氏は京都人の
饗応
(
もてなし
)
が悪かつた
許
(
ばか
)
りに奈翁やミレエが仏蘭西へ逃げ出したやうに言つて、京都生れの生徒を責め立てた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
食終りてつぎの間にいづれば、ここはちひさき
座敷
(
ザロン
)
めきたるところにて、軟き
椅子
(
いす
)
、「ゾファ」などの
脚
(
あし
)
きはめて短きをおほく
据
(
す
)
ゑたり。ここにて
珈琲
(
カッフェー
)
の
饗応
(
もてなし
)
あり。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
番頭の和平が客を
大事
(
でいじ
)
にする、第一
彼処
(
あすこ
)
の
家
(
うち
)
は
饗応
(
もてなし
)
が違ってハア
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
粗末な
饗応
(
もてなし
)
ではすまされないような気がするのだった。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
一度こんな
饗応
(
もてなし
)
を受けた馬は、その気持よさが忘れられないものか、今度そこを通りかゝる時には、どうかするとまた格子戸の前に立ちとまらうとする。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「これはどうも
福徳
(
ふくとく
)
の三年目。
望外
(
ぼうがい
)
のお
饗応
(
もてなし
)
で、じつに恐縮。どうせ御主人がお帰りになるのは四ツ刻とうけたまわったから、それまでの座つなぎ、思召しに甘えて、ひとつゆっくり頂戴するといたしましょう、なにとぞよろしく」
顎十郎捕物帳:16 菊香水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
馬は見ず知らずの婦人からこんな手厚い
饗応
(
もてなし
)
をうける自分の身の
幸福
(
しあはせ
)
を思ふて、ほれぼれと眼を細めながら、漢詩か川柳かの事でも思つてるらしい顔つきをしてゐる。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私は
今
(
いま
)
上醍醐
(
かみだいご
)
の山坊で、
非時
(
ひじ
)
の
饗応
(
もてなし
)
をうけてゐる。
茸の香
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
“饗応”の意味
《名詞》
酒食などを提供してもてなすこと。
(出典:Wiktionary)
饗
漢検準1級
部首:⾷
22画
応
常用漢字
小5
部首:⼼
7画
“饗応”で始まる語句
饗応役
饗応奉行
饗応振