頃日けいじつ)” の例文
数年来鬱積うっせき沈滞せる者頃日けいじつようやく出口を得たる事とて、前後ぜんご錯雑さくざつ序次じょじりんなく大言たいげん疾呼しっこ、われながら狂せるかと存候ほどの次第に御座候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
頃日けいじつ庭に咲いた中華民国産のマルバタマノカンザシ(円葉玉簪花)の写生に四日を費やしたようの始末で、余り我庭へも出る暇がない。
そして頃日けいじつ国書刊行会が『訪古志』を『解題叢書』中に収めて縮刷し、その伝を弘むるに至ったのを喜ぶのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
頃日けいじつたまたま書林の店頭に、数冊のふる雑誌を見る。題して紅潮社こうていしや発兌はつだ紅潮第何号と云ふ。知らずや、漢語に紅潮と云ふは女子の月経にほかならざるを。(四月十六日)
たとえば諸君、頃日けいじつ余の戸口に Banana の皮を撒布し余の殺害を企てたのも彼の方寸に相違ない。
風博士 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
実はこの日記文の古風なスタイルは、某文豪の日記の文体の模倣もほうなのでした。彼はそれを頃日けいじつ貸出台で読みふけり、すっかり影響を受けてしまったという訳です。
Sの背中 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
頃日けいじつ、丸ノ内の蘭印・中国海運という会社から、村上マサヨ宛の幸便を取りに来いという通知を受けた。
手紙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
われら頃日けいじつ二、三の仏教史論を読み、その公平の見を欠くを歎じ、一言以て仏教史家といふものに贈る。
仏教史家に一言す (新字旧仮名) / 津田左右吉小竹主(著)
目標を定めたいと思って、頃日けいじつ禅と云うものをやりだしたのだけれども、まだそれも未詳の境地で、自分だけのほんとうの悟りを開くには仲々前途はるかなものがあります。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
頃日けいじつ、水族館にて二尺くらいの山椒魚を見て、それから思うところあってあれこれと山椒魚にいて諸文献を調べてみましたが、調べて行くうちに、どうにかして、日本一ばん
黄村先生言行録 (新字新仮名) / 太宰治(著)
頃日けいじつ脱稿だっこうの三十年史は、近時きんじおよそ三十年間、我外交がいこう始末しまつにつき世間につたうるところ徃々おうおう誤謬ごびゅう多きをうれい、先生が旧幕府の時代よりみずから耳聞じぶん目撃もくげきして筆記にそんするものを
頃日けいじつ、諭吉が綴るところの未定稿中より、教育の目的とも名づくべき一段を抜抄ばっしょうしたるものなれば、前後の連絡を断つがために、意をつくすに足らず、よってこれを和解わげ演述して
教育の目的 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
世に不如意あるを知初しりそめつ、かねてより人類の最下層に鬱積うっせきせし、失望不平の一大塊、頃日けいじつ不思議の導火を得て、世の幸福を受けつつある婦人級と衝突なし、今にも破裂爆発して
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日露戦役後にける兵站へいたん衛生作業のあらまし、奉天ほうてん戦前後に於けるを当時の同僚安井氏の記したるを、頃日けいじつ『軍医団雑誌』といふのにのせ候趣にて、其別冊数部を送りこし候まゝ
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
頃日けいじつ誠ソノ旧居ヲ訪ヒ令愛芳樹女史ヲ見ル。女史遺稿若干首ヲ出シ、誠ニ示シテ曰ク、コレ先人易簀ノ前数日刪定さんていスル所ノ者ナリ。恨ムラクハイマダコレヲ刻スルニ及バズシテめいスト。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
頃日けいじつ、作者甲賀氏、小生をとらえて、著作集を出すから何か序文を書けという。
寺の住職の妻を大黒というも専ら台所をつかさどって大黒神同様僧どもに腹を減らさせないからで、頃日けいじつ『大毎』紙へ出た大正老人の「史家の茶話」に『梅花無尽蔵』三上を引いて、足利義尚将軍の時
頃日けいじつまた鶴見のふもとの扇山のむこう側に、小上高地かみこうちともいうべき一大渓谷があるのを発見したとのことで、氏自身二、三日のうちにこれが探検に出かけて行くといっていた。氏は弱冠六十五歳である。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
予、頃日けいじつ商用のため越後国えちごのくに高田に赴き、父の病を知らず。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
成就せしめんとする大檀那おおだんなは天下一人もなく数年来鬱積うっせき沈滞せるもの頃日けいじつようやく出口を得たることとて前後ぜんご錯雑さくざつ序次じょじりんなく大言たいげん疾呼しっこ我ながら狂せるかと存候ほどの次第に御座候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
博士重野某職を史官に奉じその徒と共に考索する所あり。さきに児島高徳楠木正成僧日蓮の事蹟を云々し頃日けいじつまた武蔵坊弁慶を称して後人の仮託に出づとなし公会において之を演じたり。
史論の流行 (新字旧仮名) / 津田左右吉(著)
頃日けいじつ、私はやっと雑文を書く世界から解放されましたが、随分この時代が長かっただけに、ここから抜け出すことが大変苦しかったのです、これから再出発して小説と詩に専念したいと思います。
文学的自叙伝 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
頃日けいじつようやく季題に重きを置かない説も見えて来た。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
頃日けいじついたところつじにこのこゑかざるなし。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふもとの四人を明日の夕刻来てくれと招き置きたる者にて、その用事は、頃日けいじつ余が企てたる興津おきつへ転居の事今まで遷延せんえんして決せざりしを、諸氏と相談の上最後の決定をなさんとするなり。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかも生を助けて此心願を成就せしめんとする大檀那は天下一人も無く數年來鬱積沈滯せる者頃日けいじつ漸く出口を得たる事とて前後錯雜序次倫無く大言疾呼我ながら狂せるかと存候程の次第に御座候。
歌よみに与ふる書 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)